開始以来の低水準に アチェ、パプアの危険度 外務省の渡航情報 独立運動続いた両地域 一部除き治安情勢改善

 日本外務省は十九日、インドネシアに対する渡航情報(危険情報)で、未発出を含めると五段階の三番目に当たる「渡航の是非を検討してください」としていたアチェ州、パプア州、西パプア州を、パプア州のプンチャック・ジャヤ県とミミカ県を除いて、二番目の「十分注意してください」に引き下げたと発表した。外務省が「海外危険情報」に替わって「渡航情報」を提供し始めた二〇〇二年四月以来、上記地域を「十分注意してください」の水準まで引き下げたのは初めて。ともに歴史的に分離独立運動とそれに伴う治安不安が続いてきたが、近年の治安情勢の改善を受けて危険度を引き下げた。これでプンチャック・ジャヤ県とミミカ県を除くインドネシア全域が「十分注意してください」となり、日本からの進出や投資、観光客の一層の増大を後押しすることが期待される。

 これまでの水準を継続したジャカルタやバリ島を含むそのほかの地域に関しては、二〇〇二年のバリ島爆弾テロ以降、四年連続でジャカルタとバリで大規模な自爆テロが発生したが、現在では「事件実行犯とみられる強硬派主要メンバーが数多く摘発され、テロの実行能力は低下したと考えられる」と分析。
 一方で今年に入ってからも小規模な自爆テロが発生していることなどを指摘し、「テロの標的になるような場所には可能な限り近づかないよう」呼び掛けている。

■津波以降、和平進む
 アチェでは一九七〇年代から分離独立派武装組織「自由アチェ運動」(GAM)が武力闘争を展開したが、二〇〇四年末にアチェに壊滅的な被害をもたらしたスマトラ沖地震・津波を契機に和平への機運が高まり、〇五年に和平合意が締結された。
 危険情報では「六年以上にわたる和平プロセスが順調に推移」「元GAM出身の知事が中央政府とも協力しつつ、アチェ発展のための努力継続している」点を、危険度を引き下げた理由として挙げた。
 一方、GAMの拠点だったアチェ州北岸部で散発的に要人を狙った殺害事件などが発生していることや、昨年二月にアチェ山間部でテロ組織の軍事訓練が摘発されたこと、来年二月の州知事選や首長選挙へ向け、関係者への襲撃事件などが発生していることから、「治安が不安定化する可能性も否定できない」とし、渡航・滞在する場合の注意を喚起している。

■独立派の衝突続く
 ニューギニア島の西部にあるパプア地域は、一九六九年に住民投票を経てインドネシアが併合した。以後、独立派武装組織・パプア自由運動(OPM)の活動が続いた。
 現在も散発的に独立派が関与しているといわれる衝突が発生しているが、危険情報では「パプア州都ジャヤプラ、ビアク島、西パプア州都マノクワリなどを初めとする多くの地域の治安情勢は改善されており、市民生活も安定しつつある」ことを引き下げの理由にした。
 だが、死者が出るなど泥沼化した労使紛争や独立派の関与が疑われる襲撃が発生している米系鉱山会社フリーポート社の鉱山が位置するミミカ県や、襲撃事件や住民衝突が断続的に発生しているプンチャック・ジャヤ県は「渡航の是非を検討してください」を継続。
 ジャヤプラで今年十月、独立派の集会に治安当局が介入し、死傷者が発生しているほか、来年一月の州知事選を控えて、支持者間の衝突など混乱が発生する可能性もあるとし、政治的緊張の高まり得る時期の渡航・滞在に注意を呼びかけている。

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