死刑執行で亀裂深まる イ「主権の問題だ」 豪「支援忘れたか」

 国内の刑務所に収監されている外国人薬物犯の死刑執行をめぐり、海外からインドネシア政府に対する圧力が強まっている。オーストラリアのアボット首相は厳しい表現で執行回避を迫り、ブラジルもインドネシア大使の信任を拒否した。司法への介入と受け止めるインドネシアの国内世論は反発し、亀裂が深まっている。                                                                              「インドネシアはアチェ津波の際に豪州から多額の支援を受けた。そのことを忘れるな」。アボット首相から18日、こんな発言が飛び出した。インドネシア政府から、バリ州クロボカン刑務所に収容中の豪州人死刑囚2人に対する銃殺刑が、近く執行されるとの連絡があったためだ。
 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は先月18日、ナイジェリアやブラジルなど外国籍の5人とインドネシア人1人の薬物犯に対する死刑を執行した。これを受け、豪州内ではインドネシアで拘留されている死刑囚に関心が高まり、豪州政府も再三、死刑中止を求めていた。
 海外からの声は豪州だけではない。潘基文国連事務総長は12日、レトノ外相との会談で、死刑執行に対する懸念を表明。ブラジル政府は20日、着任予定だったインドネシア大使の信任式に関係者が出席を拒み、波紋を広げている。
 インドネシア側は反発している。カラ副大統領は23日、「しかるべき時期に執行する。これは我々の主権の問題である」と方針を再確認した。ブラジル製攻撃機12機の調達計画の見直しも示唆した。
 レトノ外相は20日、「本質的に脅迫であり、その種の感情的発言には反応しない」とアボット首相の「津波の恩」発言を突っぱねた。ジョコウィ大統領も同じ日に会見し、「豪州からの抗議はなんら影響を及ぼさない」とし、最高検が今月中に予定していた豪州人2人の刑執行を延期したことに関連し、圧力に屈したわけではないと強調した。
 議会からも「正しいスタンスをとっている政府を支持する」(タントウィ・ヤフヤ国会第1委員会=外交・国防・情報=副委員長)と、大統領や外相の態度を賞賛する声があがっており、対立に拍車をかけている。

■「国家的非常事態」
 国家人権委員会の調べでは過去10年に執行された死刑は21件で、外国人死刑囚は4人。2009〜12年と14年の執行はなかった。
 大統領は昨年10月の就任直後、死刑囚64人の恩赦請求を棄却する一方、政権発足4カ月足らずで6人の刑を執行した。薬物犯に対するジョコウィ政権の厳しい姿勢の表れだ。背景には、国内に薬物依存者が多数おり、国際的な麻薬取り引きの舞台になっているという現状がある。
 ジョコウィ大統領は今月上旬、薬物関係者を集めた会合で講演し、「全国の450万人が薬物依存からの脱却のために治療が必要な状態にあり、薬物が原因で年に1万8千人が死亡しており、国家的非常事態にある」と強調した。この数字はインドネシア大学と国家麻薬委員会(BNN)が共同でまとめた推計値だが、一部では、恣意的な数字との指摘もある。

■二重基準の指摘も
 一方、海外では約230人のインドネシア人が死刑判決を受けている。サウジアラビアやマレーシアで家政婦として働くインドネシア人が起こす事件などでは、劣悪な労働環境に同情する世論が強く、外務省や有力政治家が死刑判決を受けた被告への「支援活動」を展開することも多い。
 このためビショップ豪外相は「豪州の行っている努力はインドネシア政府が自国民の死刑回避のために取っている行動と同じだ」と指摘した。(道下健弘)

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