次期警察長官、容疑者に 大統領指導力に疑問符 収賄疑惑 KPK「赤候補」を追及

 汚職撲滅委員会(KPK)は13日午後、ジョコウィ大統領が次期国家警察長官候補に指名したブディ・グナワン教育実習所所長(55)を汚職撲滅法違反の疑いで容疑者に断定したと発表した。メガワティ元大統領主導の人事に屈したジョコウィ氏の指導力を疑問視する声が噴出している。

 アブラハム・サマッド委員長は会見で、ブディ容疑者が国家警察人事局長時代(2003〜06年)などに賄賂を受け取っていたことを示す複数の証拠を発見したと語った。ただ、受け取った金額や贈賄側の容疑者など詳細は明らかにしなかった。
 KPKは12日、ブディ氏を容疑者に断定。同日、ジョコウィ大統領に面会と報告を申し入れたが実現しなかったため、13日の発表に踏み切ったという。
 アブラハム委員長は「(昨年10月の)組閣の際に我々がブディ容疑者を不適格とした理由を公に説明する時が来た。同容疑者の捜査を進めていたため、入閣に『赤信号』を出した」と語った。KPKは昨年7月に情報提供を受け、捜査を開始したという。
 長官候補の適性検査を実施する国会第3委員会(法務)は「推定無罪の原則を貫く」として、10会派中8会派の賛成で容疑者断定後も審議を継続する方針。国会の検査を経て、大統領は正式に次期長官を任命する。
■組閣時から態度一変
 昨年の組閣をめぐり、ジョコウィ氏側と所属政党の闘争民主党(PDIP)が対立した。ジョコウィ氏は閣僚候補43人の汚職関与の有無を洗い出すため、KPKと金融取引報告分析センター(PPATK)に調査を要請。このうち汚職関与が指摘された8人を入れ替え、メガワティ氏主導の組閣ではないことをアピールした。メガワティ氏の警護官だったブディ容疑者は汚職疑惑の一人との観測もあったが、KPKは公表しなかった。
 しかし今回の警察長官人事で、ジョコウィ大統領は組閣時と異なり、KPKやPPATKによる調査を経ずにブディ容疑者を長官候補に単独指名。汚職監視団(ICW)などは、以前から汚職疑惑が指摘されてきた同容疑者の指名を一斉に非難した。政治評論家ヘリ・ブディアント氏は「清廉な政権運営という公約に反する。組閣時から態度を一変させ、信用を失墜しかねない」と警告する。
 ブディ容疑者は2010年、国家警察高官の不正蓄財疑惑が浮上した際に名前が取り沙汰された。週刊誌テンポが高官21人の口座を問題視。特にブディ容疑者を大きく取り上げ、南ジャカルタの高級マンション建設に絡む詐欺事件への関与などを指摘。この報道直後に同誌買い占め騒動や、同誌編集部へ火炎瓶が投げ込まれる事件が発生した。
 当時、国家警察長官の後任人事をめぐり警察内部の高官間の対立が表面化。特定の高官の不正疑惑のみ暴露されたとの見方も出た。一連の騒動後、追及された高官は皆無だった。(田村隼哉)

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly