【バンダアチェの街角(下)】天然石ブームに沸く 削って磨いて宝飾品に

 「これが最も人気のあるギオックだよ」
 アフザさん(44)が深緑色の翡翠(ひすい)の指輪を指さす。値段は500万ルピア。「色の具合、輝き、成分などで価値がまったく異なる。光りにかざしてみな。きれいだろう。この原石は1500万ルピアでいいよ」。長さ15センチほどの荒削りの石のかけらを手にしながら、たくみな口上で説明していく。
 アチェは空前の天然石ブームに沸いている。バンダアチェ市ウレレ海岸近くには昨年10月、ギオック市場がオープンした。
 入居する店舗は約30軒。どの店もガラスケースに指輪などに加工したギオックやその原石を所狭しと並べ、これをじっくりと見定める客が集まっていた。ジャカルタなどから業者が買い付けにやって来るほか、マレーシア、シンガポール、中国など海外からも業者や愛好家が多数訪れるという。
 「深緑色のギオックがよく知られているが、アチェでは30色近くのギオックが採れる。北マルクのテルナテ島やカリマンタン産も高値で取引されるが、アチェ産のような多様な色合いのものはない」。この道28年。ブーム到来のはるか前から原石を磨いてきたアフザさんが、アチェ産ギオックの魅力について熱弁を振るう。

▽1万5000人の産業
 アチェ天然石愛好家協会の推計では、アチェ州内でギオック関連業に従事する業者は1万5千人に上る。2011年に設立された同協会も会員が急増し、州内13の県市に支部を構える。バンダアチェ近郊のアチェブサール、ピディ、ロクスマウェ、中部アチェや西アチェの山間部で採掘場の開発が進み、「ギオックラッシュ」に沸く。
 バンダアチェ市内の高級ホテルには装飾品のギオックだけでなく、室内に飾る水石の置物としても販売されている。観光客相手の露天商が繁華街の路上にギオックを並べたり、商店の陳列棚の一角にギオックコーナーが設けられたりと、ギオックを見かけない日はないほどだ。
 ギオック市場に出店したばかりというアリ・イドリスさん(38)は「アチェの新しい産業になった」と話す。昨年、北ジャカルタ・マンガドゥアで開かれたアジア太平洋ギオック国際展示会のコンテストで、アチェのギオック業者の作品が優勝し、地元業者の励みになったという。
 来年はバンダアチェが同大会の開催地になる。「地元で入賞したい」。タクシー運転手からギオックの加工職人に転身し、店を構えるに至ったアリさんは目を輝かせた。(配島克彦、写真も、おわり)

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