「働く内閣」実行あるのみ 日本は対応、変える必要 佐藤百合氏が寄稿

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)新政権でインドネシアの政治・経済はどのように変化していくのか。日本貿易振興機構・アジア経済研究所の上席主任調査研究員、佐藤百合氏に寄稿してもらった。

 10月27日、ジョコウィ政権の「働く内閣」が発足した。
 選挙キャンペーン中から「メンタル革命」を唱え、就任演説で「我々皆が、働き、働き、働くために、共に動き出す歴史的瞬間だ」と国民に呼びかけたジョコウィ大統領。「革命」とか「働く」というのが実際にはどういうことなのか、それが内閣の始動によって見え始めた。
 新政権は「100日プログラム」的なものは作らない。選挙マニフェストで、目標とプログラムははっきりしている。あとは実行あるのみ。就任当日の初閣議で大臣たちが大統領から受けたのは、一日も時をおかずに実行せよ、実行に必要であれば迷うことなく省内を再編せよ、実行に適正な人員かどうかを迅速に評価せよ、というお達しだった。実を伴わない議論、マニフェストの精神にそぐわない話をしている暇はないという、大臣たちの緊張感は高い。

■バペナスが要
 新内閣の編成における最大の注目点は、国家官房長官と開発企画大臣(国家開発企画庁〈バペナス〉長官)を筆頭閣僚に位置づけ、腹心の政治学者を当てたことだ。この2大臣が調整大臣の上位にあって内閣全体を調整する。
 この二人は、選挙対策および政権移行チームの参謀役アンディ・ウィジャヤントの下でチームを組み、大統領府・省再編構想を練ってきた。経済学者が長を務めてきたバペナスを、大統領の意志を行政に直接反映させるための要に変えるのが、ジョコウィ大統領の狙いだろう。
 経済閣僚の顔ぶれに特徴的なのは、企業経営者が多いことである。新設の海事担当調整大臣の下に編成された運輸、海洋・漁業、観光、エネルギー・鉱物資源の四大臣は、国営企業の改革者、または苦労の末に成功した民間企業家だ。工業大臣と農業大臣も起業経験のある苦労人である。専門知識より人物本位の人選だが、大臣としての手腕は未知数のところがある。
 逆に、専門知識と実績があるのは財務大臣。唯一残った経済テクノクラートである。燃料補助金を削減し、財政支出を社会政策にシフトさせつつ、バラ撒きを制御する重責を担う。ここは手堅い人事といえる。
 「働く内閣」は政権構想の「実行」部隊として始動した。セミナーや調査ばかり多いと認識されている日本は、何が「実」なのかを問われることになろう。ジョコウィの政権構想の肝は「庶民目線」にある。たとえばインフラ開発が重要だとしても、庶民の為になるインフラか、とジョコウィ大統領は問う。
 一方、政権構想のキーワード「海洋」には、日本は多くの接点をもちそうだ。新しい個性を打ち出したジョコウィ政権とのつき合い方を、日本は大きく変える必要がありそうだ。

◇佐藤百合(さとう ゆり) アジア経済研究所
 1958年、東京都生まれ。上智大外国語学部卒、インドネシア大学大学院博士課程修了(経済学博士)。81年、アジア経済研究所入所、インドネシアを担当、在ジャカルタ海外研究員、インドネシア商工会議所(カディン)特別アドバイザーを経て、2010年より日本貿易振興機構・アジア経済研究所地域研究センター次長。著書に「経済大国インドネシア」(中公新書)など多数。

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