路地裏でも犠牲祭祝う 子どもたちは興味津々 貧富の差超え一体感
犠牲祭(イドゥル・アドハ)の5日、インドネシア各地で牛やヤギをいけにえとして神に捧げ、モスクなどで感謝の気持ちを示す礼拝が行われた。裕福な人が貧しい人へ牛やヤギなどの肉を寄付し分け合って食べるため、近隣住民との一体感も増す。
中央ジャカルタ・タナアバンのクボンカチャンにあるサイド・ナウム・モスクでは、モスク横の住宅が密集する路地裏の木陰に、約100人の親子連れや子どもたちが集まった。ジュースや菓子を片手に、住民ら7人1組で1頭ずつ寄付した牛12頭、ヤギ11頭が解体される様子を見守った。
いよいよ処理する時。鉄柱につながれた牛の左前脚にロープがかかった。牛を寄付した人の名前と「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」の声の直後、2人がかりで頭としっぽを引っ張ると、体重450キロの牛が暴れだす。ロープに足を取られて横倒しになり、砂ぼこりが舞い上がった。大人しくなった牛は、頭を反らされ首筋があらわにされる。
作業を仕切るミアンさん(45)がナイフを勢いよく刺して一気に引くと、ペンキのような真っ赤な血があふれ出し、牛は四肢をばたつかせた。多くが1、2分で絶命するが、中には5分以上たっても血しぶきを上げながら起き上がろうとする牛もおり、その度に子どもたちが悲鳴を上げた。
牛はその後、仰向けにされ最初に頭を切り取られる。服を血で赤黒く染めた2人が棒でナイフを研ぎながら手際よく毛皮をはがし、手おので硬い骨を割って内臓を取り出す。はがされた毛皮の上で次々と肉が切り取られ、最後はきれいに骨だけが残った。
牛を寄付したジュナイディさん(40)は息子のタミンくん(8)と訪れ、「寄付して皆で分け合う大切さや、牛が犠牲になる姿を見るのは大切な勉強だ」と話す。タミンくんは「こわくない」と興味深げに作業を見つめていた。
肉はモスクを利用する近隣住民らに、一家族400グラムずつ配られる。普段はひっそりとしている路地裏も、わきあいあいと犠牲祭を祝う住民らでにぎやかだった。(毛利春香)