【スラマット・ジャラン】 道半ばも、「明るい材料」 「新世代リーダー」に期待 警察支援の山崎さん

 インドネシア国家警察長官政策アドバイザー兼国際協力機構(JICA)の同国家警察改革支援プログラム・マネジャーとして2001年から2期にわたり、警察支援に携わってきた山崎裕人さん(59、日本警察警視監)が、退職を控え、8月10日に帰任する。自らが敷いたレールを2回目の任期で安定させてきた支援活動は、後任の中尾克彦さん(前熊本県警本部長)に引き継ぐ。山崎さんは「インドネシア警察が本当に変わるのはまだ時間がかかるが、明るい材料が見え始めた」と総括した。(道下健弘、写真も)

 山崎さんがこだわったのが、交番を拠点にした巡回連絡などで市民との連携を重視する「市民警察」の育成。2000年に国軍から分離したばかりだった警察の基盤整備を支援するプロジェクトの発足は、図らずも国際テロが国際社会を揺さぶっていた時期と重なる。米・豪が通信傍受など具体的な捜査手法を導入し、支援内容をテロ対策にシフトする中、山崎さんには「即効性のあるテロ対策はない」と判断。「市民との距離を近づけることがテロ対策に資する」との考えを貫いた。日本の地域警察は世界に誇れるという自負もあった。
 これまでの成果の自己採点は「52点」と厳しい。「これが成果だと胸を張って言えるものはまだない」。課題の一つに掲げる通信指令体制の構築も、犯罪発生時に即応する緊急配備に不可欠だが、事案発生時に通報があることが大前提。しかし、市民からの通報はまだまだ少なく、まだ市民の信頼を勝ち得たとはいえない。
 10年間積み重ねてきたことが少しずつ花開き始めたのも事実。山崎さんが「明るい材料」というのは「新世代のリーダー」が現れ始めたことだ。
 「背中を見せている人間が変わらないと、組織全体は変わらない」という哲学を持つ山崎さん。「昔は上級幹部になると『馬鹿殿』みたいに威張る人が多かった」と苦笑いするが、少しずつ育ち始めた「低姿勢なリーダーシップを持った幹部」の存在を指摘する。支援の一環で始めた、日本での研修経験のある幹部候補が管理職への昇進時期にさしかかったのも好材料だ。
 幹部の姿勢と呼応し、現場レベルにも明るい兆しはある。「ちゃんとした正義感を持って、市民の役に立ちたいという人間はいっぱいいる。組織的に光を当てる手段や技術がなかっただけ」。掘り起こすために日本の業務管理や組織管理手法を紹介した結果、成果を挙げた市民警察官の存在にスポットが当たり、模範警察官として全国に周知されるようになった。
 幹部の謙虚な姿勢は、現場の警察官にも反映され、それを見た市民から信頼を集められるようになる、というのが山崎さんの描く理想像だ。「どんな組織でも初級、中級、上級、最高クラスの各幹部がちゃんと見てくれているのはモチベーションにつながる。警察でそういった気質が当たり前になれば、外の行政組織の改革にも波及する可能性は十分にある」と展望する。

◇20年以上交流続ける
 インドネシアとの縁は日本大使館の一等書記官時(88―91年)にさかのぼる。その後も日本の文民警察のカンボジアの国連平和維持活動(PKO)を指揮するなど、これまでインドネシア警察との交流を20年以上続けてきた。
 一国の治安機関の基盤整備に関わるという大役を果たした充実感は大きい。分離前から、警察の国際会議では、「警察」として出席するなど、「インドネシアも警察の国際スタンダードを知っていた」と、交流の中で、当事者の思いを汲み取っていた山崎さん。同じ東南アジア内で、マレーシアやフィリピン警察が軍から独立して一般警察になる姿を横目に見てきたインドネシア警察の思いはよくわかっていただけに、「大使館勤務時代からお世話になった恩返しと手伝いができたのは大変名誉なこと」と36年間の警察人生を締めくくった。

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