東南アジア最大、スラバヤの売春街 「ドリー閉鎖」市が宣言 途方に暮れる女性たち   

 東ジャワ州スラバヤ市は18日、市の中心部にある東南アジア最大級の売春街「ドリー」の閉鎖を宣言した。市は性産業従事者を支援するとしているが、閉鎖に反対する関係者や住民とは補償金などで合意には至っていない。住民は同日朝から街の全出入り口にバリケードを設置。市が動員した警官1500人とにらみ合う場面もあり、緊張が走った。街の一角には、行き場を失い途方に暮れる売春婦たちの姿があった。 

■住民の補償なし
 市による強制撤去をおそれ、ドリーでは前日から住民がバリケードの組み立てを始め、交代で監視に当たっていた。閉鎖の強行姿勢を崩さないリスマ市長に対し地元住民や売春婦らが18日、デモで抗議した。
 現在は、東ジャワ州マランやマドゥラ島出身者など約1400人以上の性産業従事者が働いており、閉鎖宣言に頭を抱えた。20年以上売春婦として働いてきたというドリー出身の女性は、満足がいかぬ支給金の関係書類を警官隊の前で燃やし「この仕事を失ったら、どうやって生きていけばいいのか分からない」と涙を浮かべた。  
 売春街閉鎖は、地域経済にも影響を及ぼす。ドリー一帯には約1万人が暮らし、性産業関連の洗濯業者や守衛として働いている。市は、直接関係ない住民には補償金を供与する予定はない。住民を支援する非政府組織(NGO)代表のザイヌル・ファドゥリさんは「彼らを路頭に迷わせる政策を実施すべきでない」と批判。市側との交渉では一方的に閉鎖を告げられただけで「(住民に対する)補償金などの支援策は提示されなかった」と明かす。
 市は売春婦やあっせん業者に対しては500万ルピアを支給し、再就職を促す計画だ。だが近隣の地方自治体からも、売春婦が地方の売春街に拡散するのでは、と懸念する見方が出ている。

■治安安定に期待も
 同日、市内のイスラムセンターで開催された式典にはリスマ・スラバヤ市長、スカルウォ東ジャワ州知事、サリム社会相が出席した。閉鎖に賛成の一部の住民約100人も参加し、「ドリーを市とともに治安が安定した場所にしていきたい」と語った。
 今後は社会省が売春婦へ80億ルピア、東ジャワ州政府があっせん業者へ15億ルピア、スラバヤ市が住民へ16億ルピアの支援金をそれぞれ支給し、再就職などを支援する予定だ。
 スラバヤ市は2011年から市内の売春施設の閉鎖に取り組んでいる。これまでにセメミ、ジャラック、モロスネンの3カ所を閉鎖した。

■オランダが由来
 ドリーの名の由来は二つの説がある。一つは植民地時代にこの地に売春業を始めたオランダ人の名前を取ったもの。別では、オランダ人と結婚し、1960年代に現在の場所に宿泊施設を開業した女性の名前を冠しているという説もある。(スラバヤで小塩航大、写真も)

「憩いの場に」「犯罪増加も」
 ドリーへ向かうため、ジュアンダ空港からタクシーに乗った。運転手のスディさんは、「今日はドリーが閉鎖される日だ」と怪訝な表情に。売春街には批判的で、ドリーには麻薬やエイズがまん延していると言い「スラバヤには必要無く、公園やモールなどの市民の憩いの場にしてほしい」とリスマ市長への希望を語った。
 地元紙記者のサイドさんは、スラバヤで相次ぐ売春宿の閉鎖が性犯罪の増加につながりかねないと危ぐ。「性産業は一定の歯止めになっている側面がある。もちろんこの産業は悪だが、女性が暴行を受ける事件が増えないか心配だ」と指摘した。 

大統領候補ら閉鎖支持
 プラボウォ大統領候補(グリンドラ党)陣営からは、一貫して支持してきたイスラム保守・福祉正義正義党(PKS)のヒダヤット・ヌルワヒッド最高機関幹部が18日、談話を出した。「プラボウォ―ハッタは閉鎖支持。神に感謝します。東南アジア最大の売春地帯があるせいで、われわれはインドネシアのことを誇りに思えなかった」。
 ジョコウィ大統領候補(闘争民主党=PDIP)は17日、PDIPが市長選に担いだリスマ市長を支持。「解決策を与え、そこで働いた人が戻らないようにする道をつくるのが重要。リスマ市長はもう、それを計算している」と話した。
 意見のずれがあったPDIP自体も支持を表明。閉鎖を断行したリスマ市長に対し、PDIPスラバヤ支部長のウィスヌ副市長は「関連業者とともに大失業が起きる」と猛反発していた。ハスト副幹事長は18日「もめたのは閉鎖後の失業についてだけ。昨日ウィスヌ副市長に会ったが(閉鎖は)問題ないと言っていた」と明かしている。

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