「ブラックベリーもういらない」 世界初の新機種発売   高級モールに市民殺到 90人が卒倒、警察と衝突

 南ジャカルタの高級ショッピングモール「パシフィック・プレイス」で二十五日、スマートフォン最新機種「ブラックベリー・ボールド9790」(ベラッジオ)が世界で初めて発売された。製造元のリサーチ・イン・モーション(RIM)社と販売代理店三社は同日、先着一千人を対象に半額キャンペーンを実施したが、新製品を安く買い求めようと市民が殺到。九十人が卒倒し、十数人がけがをするなどの騒ぎとなった。警備に当たっていた警察は途中で販売中止を命令。インドネシアにおけるブラックベリー人気を象徴するはずのイベントが一転して、痛ましい事態となった。

 「Indonesia. First in the World.(インドネシアが世界で初)」。長蛇の列を見下ろすように、会場には巨大な看板が掲げられた。普段はタクシー乗り場になっているロビー前が特別販売会場に様変わり。老若男女が列を作っていた。前日夕方から並び始めた人もおり、疲れ切った様子で座り込む人も多い。周辺は、約二百人の警官やドーベルマンを連れた警備員が動員され、会場脇には救急車が待機。取材であることを告げると、やっと会場に入れてもらえた。
 「みなさんの安全のためです。どうか落ち着いてください。押さずに列に並んでください。並んでいる人は、全員がブラックベリーを買えるようになっています」。会場のスピーカーからは、警官の声がこだましていた。
 RIM社と公式販売代理店のテレタマ・アルタ・マンディリ社、コムテック・セルラー社、セルラー・メディア・インフォタマ社が実施したイベントは、クレジットカード使用で通常四百六十万ルピアの価格が約半額の二百三十万ルピアになるプロモーション。
 半額対象は一千人だが、ほかの客も通常価格で購入できるとの話が広まったこともあり、長蛇の列は二十五日正午には、一千人を大きく超す大群へとふくれあがっていた。販売は午前十時ごろに開始されたが、正午を過ぎてもあまり列が進まない。あちこちで客同士のいさかいが絶えず、その度に警察がマイクで「落ち着きなさい」と呼び掛けた。
 午後零時半前。「半額で購入できる人はすでに一千人を超えた」とのうわさも広まり、業を煮やしたのか、並んでいた二百人ほどが急に立ち上がり、ストレスをぶちまけるかのように警察に突進し始めた。持っていた水のカップを投げる人、猛然とカウンターへ走り出す若者、警察に取り押さえられる男性、ヒステリックな叫び声を上げる女性、会場は混乱に包まれた。
 騒動が一段落すると、卒倒した女性が警備員に運び出され、へたり込む男性の姿があった。ある女性は、警備員や販売員に向かって「ブラックベリーなんているもんか。ずっと待たされ、地べたに座り、服もびしょびしょ。少しは考えたらどうだ」と数十分にわたり怒鳴り散らしていた。
 騒動の収拾に当たる警察は、午後零時半過ぎに販売の中止を指示。騒動の後に、鉄柵の中に並ばされていた数百人を帰宅させた。「家族や子どもが待ってます。早く帰宅しなさい」と警察がアナウンスすると、市民から罵声が上がった。
 一方、会社を休んで朝五時から六時間列に並び、プロモ価格で購入できたという会社員のグフロンさんは「疲れたけどやっと買えた。神に感謝する」と喜びを語り、「パワフルでスタイリッシュ」と書かれた袋を誇らしげに掲げた。
 RIM社は、フェイスブックのアカウントを通じ、五〇%割引の最新機種は売り切れたと発表した。
 販売代理店は、割引は行わず、通常価格での販売だが二十六日も発売イベントを継続する予定。一般店頭での取り扱いも始まる。
 一方、ジャカルタ警視庁のバハルディン・ヤファル広報局長は、イベントが公共の秩序を乱した可能性があるとして、イベントの許可取得や安全管理について調べを進めていると明らかにした。

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