「虐殺の再演」「罪描写」に反響 映画「アクト・オブ・キリング」日本公開 9.30事件にみる普遍性

 1965年の9.30事件以降に起きた、インドネシア共産党支持者への虐殺を描いた映画「アクト・オブ・キリング」(インドネシア語題:ジャガル)が12日、東京や愛知、福岡のミニシアターで公開された。7月末まで全国33都市で上映予定。人間の普遍的な「罪」の意識を表現したドキュメンタリー作品として評価され、著名人らも推薦の言葉を寄せている。犠牲者100万人規模ともいわれ、インドネシアの国政を暗転させた闇の歴史に、日本でも関心が高まりつつある。
 日本の配給元のトランスフォーマー社によると、良質な作品を上映することで知られる東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムでは、108席の劇場で初日5回の上映がいずれも満席。立ち見者も出て、館外にも行列ができた。2日目の13日も満席が続いた。
 好評を受け、都内ではほかのミニシアターで公開日が前倒しになり、全国各地でも公開日が次々と確定しており、同社は「予想を上回る反響だ」と手応えを感じている。
 作品は、北スマトラ州メダンで実際に虐殺にかかわった老人たちが、虐殺再現映画を自ら撮影してみないかと勧誘されたという設定。「実際の虐殺者に殺人を演じさせる」という前代未聞の手法が前評判となった。観賞者にのしかかる、撮影の過程で露出する人間の狂気・罪の意識描写が、国際的に高い評価を得た。
 出演する自警団「プムダ・パンチャシラ」のメンバーが、実生活では商人から場所代を強制徴収。カラ副大統領(撮影当時)がこうした自警団は不可欠だと説く講演。目の前の選挙集会場でいま、カネがばらまかれていると豪語するメンバー。インドネシアの現実の影を表す映像も入り、過去の虐殺の再現と交錯していく。
 公開に当たって、日本の著名人が公式サイトに推薦の言葉を寄せた。音楽家の坂本龍一さんは「ドキュメンタリーとは何かを問う、マスト・シー(must-see)の映画だ」と評価。映画評論家の町山智浩さんは「告解と嗚咽(おえつ)の結末に心臓を撃ち抜かれる!」と締めくくっている。
 9.30事件後の混乱を自ら体験したスカルノ初代大統領夫人のデヴィ・スカルノさんは、米国人のジョシュア・オッペンハイマー監督とともに先月都内で開かれた試写会に参加。今月には民放にも出演し、事件の背景には米国の圧力もあり、赤狩りの名の下、共産党シンパだけではなく容共とは無関係な普通の人々も殺害されていったと話した。映画の推薦コメントでも「今、その真実が明かされようとしています」と寄せている。
 オッペンハイマー監督は、作品を通じてインドネシア政府が事件の史実を認めるよう望んでいる。また当時のインドネシア政府を支援した米国や英国、日本など反共陣営にも虐殺の責任はあると訴えている。
 日本公開にあたり字幕を監修したのは、今年「9.30 世界を震撼させた日」を著し、今月にはジャカルタで事件に関して講演した倉沢愛子・慶応大学名誉教授。パンフレットにも作品背景を寄稿している。
 作品は、13年に山形国際ドキュメンタリー映画祭で「殺人という行為」という邦題で約1週間上映され、最優秀賞の山形市長賞を受賞。ベルリン国際映画祭でもエキュメニカル審査員賞に輝くなど、50以上の映画賞を受賞している。今年の米アカデミー賞では長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。インドネシアでは各地の大学などで上映されてきたが、一般の劇場では未公開。製作者の意向でネット公開されているが、日本では視聴が一部制限されていたため、劇場公開を望む声があった。 (前山つよし)

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