宗教攻撃で非難噴出 苦戦のファウジ陣営 首都知事選

 ジャカルタ特別州知事選決選投票(9月20日)を控え、ジャカルタ土着の民族ブタウィ人、ムスリムであることを強調する現職のファウジ・ボウォ陣営の戦略が波紋を広げている。第1回投票で2位通過と苦戦を強いられた同陣営の国民的歌手が対抗馬の宗教を攻撃。これに対し「法令違反」「虚偽の事実を喧伝」などと非難が噴出し、選挙活動の場であからさまに宗教を持ち出したことに法的措置を講じるよう訴える声も強まっている。
 問題となっているのは、「ダンス歌謡・ダンドゥットの王様」「歌うイスラム伝道師」として知られるインドネシア音楽界の大御所ロマ・イラマ氏の講話。選挙監視委員会が録画テープを入手し、責任を追及する構えを示している。
 これによると、ロマ氏は、ファウジ氏が同席した西ジャカルタのモスクの講話で「(対抗馬の)ジョコウィ(ジョコ・ウィドド氏)の母親はキリスト教徒だ」と虚偽の事実を喧伝。「ムスリムはムスリムに投票すべき」との持論を展開し、ジョコウィ氏とペアを組む華人でプロテスタントのバスキ・チャハヤ・プルナマ副知事候補ら異教徒には投票しないよう間接的に呼び掛けた。
 しかし、これが選挙活動の場に宗教を持ち出したとして非難が沸騰。騒動はロマ氏が選挙監視委に聴取を受け、記者会見で涙を流したことで頂点を迎えた。同委はロマ氏が地方自治法が禁じる①期間外の選挙活動②選挙活動での礼拝所の使用③宗教、民族などの社会的属性の攻撃?で、選挙違反を犯した証拠をそろえたとし、13日にも告発するか最終決定する方針だ。
 これに対し、ファウジ陣営は「ロマ氏はアーティストの応援者であるに過ぎない」として陣営と切り離し、騒動に巻き込まれないよう火消しに躍起になっている。ファウジ氏は「教会詣で」を敢行。8日訪れた北ジャカルタの教会では「対立があってはいけない。宗教を問題化することはない」とキリスト教徒に語り掛けた。
 ファウジ氏は第1回投票まではブタウィ人の出自を前面に出し、ジョコウィ氏ら地方出身の「落下傘候補」を攻撃したが、決選投票に向け「ジャカルタはムスリムが多数派の土地」と宗教を強調する戦略にシフト。州内のモスクを歴訪し、伝道師が「ムスリムに投票すべき」と投票誘導する場を設けてきたほか、各地のモスクに多額の献金を行っている。
 これに対し、ジョコウィ氏は家族で小巡礼(ウムロ)に赴いたり、モスクを訪れたりとムスリムであることをさりげなくアピール。だが「母はクリスチャン」とされたことには「事実に反する」と不快感を表明した。バスキ氏は「選挙では中傷する側が有権者に嫌がられる」と静観しているが、陣営は宗教攻撃は社会的影響が大きいとして法的措置を講じる構えを見せている。
 一連の騒動について、イスラム団体の統括機関・イスラム指導者会議(MUI)のアミダン議長は「インドネシアはイスラム国家ではなく、民主国家。ムスリムは非ムスリムにも投票してよい」と述べ、宗教で選ぶのではなく、モラルを守る候補者に投票してほしいと呼び掛けている。

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