結婚とらわれず、愛育む 性同一性障害のフィラさん

 戸籍上の性別はインドネシアも日本と同様、特定の条件を満たし裁判を経ないと、変えることはできない。心と体の性が一致しない性同一性障害。体は男でも心は女、その逆もある。その多くが結婚をあきらめているが、法令上の結婚にとらわれず、愛を育む人たちがいる。
 昨年8月、イスラムの大祭レバラン。テレビには家族連れでにぎわう行楽地が映っていた。性同一性障害を持つフィラ・デルミさん(本名マルジェ・バシルディン・アフマッド、21歳)は久しぶりに顔を合わせた母シナル・コマラサリさん(42)の前で声を上げ泣いた。母もまた泣いていた。
 性同一性障害を家族に受け入れられず、家出から約4年。「病気にかかってないか」「ご飯は食べているか」「バイクのローンは払えるか」。怒っていると思ったのに、母は質問攻め。母親に会うよう自分を説得した交際相手、アドリアヌス・ユド・ヘンドラワンさん(35)が愛しかった。

  路上での「初恋」
 フィラさん、アドリアヌスさんはバンテン州南タンゲラン市に暮らす。2009年、2人は路上で出会った。同性愛をタブー視するムスリムが多いインドネシアで、性同一性障害者が仕事を探すことは難しい。当時、フィラさんが行き着いたのは売春だった。アドリアヌスさんは客として会ううち、気遣いのできるフィラさんに恋した。
 交際を始めると、フィラさんは売春を止めた。ある日、アドリアヌスさんはフィラさんが家を空けたすきに携帯電話を盗み見。売春をしていたフィラさんに不信感を抱いていた。電話帳を見ると目が止まり、涙がこぼれた。自分の電話番号の登録名には「初恋の人」と記されていた。

幸せな家庭夢見て
 昨年3月23日、2人は婚約した。性別変更のための裁判所への申し立てには性転換手術を受けた病院の証明書などが必要。フィラさんは美容師、アドリアヌスさんは運転手。ともに収入は少なく、手術のお金は捻出できない。
 それよりも夢がある。2人一緒に美容院を開くこと。孤児を養子にもらうこと。「男でもない、女でもない私を受け入れてくれた。いつか幸せな家庭を築きたい」。フィラさんは照れながら婚約指輪を見つめる。法令上の結婚はまだまだ先の話になりそうだ。(上松亮介、写真も) 

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