後手に回る洪水対策 首都冠水19カ所に 昨年予算執行は25%
ジャカルタ特別州内で8日に降り続いた豪雨は、州内各所で冠水を引き起こした。洪水が今年も本格化する恐れがあると懸念が上がっているが、州政府が昨年に割り当てた洪水対策予算のうち、執行されたのは25〜30%程度。2月の雨期のピークを前に、中央政府や他州とも連携し、対策強化を図るが、後手に回っている。
州政府は州内884の小規模河川のうち、160の浚渫を終えたばかり。主要13河川の対策も目標の40%にとどまっている。ジョコウィ知事は9日、「対策は一定の効果を上げている。ただ、どの対策も未完了だ」と話し、今後も被害が続く可能性があるとの認識を示した。
急がれるのは、首都中心部を縦断するチリウン川の水の分散だ。同川は西ジャワ州ボゴールでの降雨で増水し、ジャカルタの洪水の原因となってきた。雨水の排水に重要な役割を担う東西の放水路のうち、現時点で連結しているのは西放水路のみ。浚渫と東放水路への接続が完了すれば洪水被害軽減に一定の効果が見込まれるが、工事は昨年12月末に始まったばかりだ。
首都中心部の雨水を集め、ポンプで海に押し出す北ジャカルタのプルイット貯水池は8日午後4時時点で水位が0センチに達し、国家防災庁(BNPB)は4段階中最高度の洪水警戒レベル「シアガ1」を発令。大統領宮殿周辺が水浸しとなる一歩手前だった。
チリウン川に設けられ、西放水路の水量を調節する多くの水門でも、警戒態勢を発令した。南ジャカルタ・マンガライ水門で700センチ(シアガ4)、中央ジャカルタ・カレット水門で490センチ(シアガ3)に達した。
雨水の排水機能もぜい弱なままだ。雨水を地下に吸収させる「浸透井戸」は州全域で将来的に約200万基が必要と見込むが、資機材の不足などが原因で、これまでに設置したのは約1900基。
BNPBによると8日、数時間降り続いた豪雨により、北ジャカルタ・アンチョールなど州の19カ所で20〜50センチメートル冠水。隣接するバンテン州タンゲランの住宅地数カ所でも30〜90センチの冠水が確認された。
交通にも大きな影響が出た。北ジャカルタのカンプン・バンダン駅〜ラジャワリ駅間の線路が冠水し、国鉄は同区間を閉鎖。北ジャカルタ・マンガドゥア通りや西ジャカルタ・カプック・ラヤ通りなど冠水30センチを超えた地点では、エンジンに水が入り、動かなくなるオートバイや自動車が続出した。
BNPBは9日、洪水の被害に遭う見込みが高い州内124郡を公表し、対策を優先して実施するよう求めた。科学技術評価応用庁(BPPT)と共同で、昨年の洪水被害の分析を基に予測した。