ジョクジャで草の根地域振興 10年の節目、中央政府も注視 デサ・ウィサタ=観光村

 「わたしたちの農村で豊かな自然や伝統文化を体験しませんか」―。村民と村外の有志が協力しながら地域おこしを図る「デサ・ウィサタ(観光村)」が地方を中心に増えている。最初の本格的な観光村が立ち上がってから10年以上が経ち、観光客をもてなすプログラムも多様化。住民主導の草の根活動による観光経済効果に中央政府も注視、昨年には全国に広がる観光村のネットワーク組織も設けられた。活動が盛んな地域の一つ、ジョクジャカルタ特別州スレマン県を訪ねた。
 北部にそびえる火山ムラピ山の東麓に位置するサンビ村。風光明媚な景観を持つ人口200人余りの質素な集落だが、ジョクジャカルタの舞踊・音楽家が憩う拠点でもある。こうした芸術家たちが自然と伝統芸能を生かした村おこしができないかと2003年に発案したのが「観光村」のコンセプト。村民の意見を反映させ、王宮からの資金援助も得つつ、村へのアクセス道路整備に始まり、農業やアスレチックなどの野外体験が楽しめるよう設備も充実させていった。「団体客が多く、大人数で楽しめる体験型の催しを増やしたことが成功のカギだった」。ムジマ村長(56)はそう観光村10年の歴史を振り返る。軌道に乗った同村を手本に、観光村の活動は各地に根付いていった。
 県内の観光村は現在、正式登録だけで37カ所もある。市街地から車で約45分のクンバン・アルム村(住民約800人)は、05年に活動を開始した。国内だけでなく外国人の受け入れも視野に、英語や中国語の表示案内、村民への通訳研修、観光プログラム料金設定など体制を整備。いまは欧米など38カ国から観光客が訪れるにまで知名度が上がった。村外から通訳者も雇い、雇用創出にも一役買っている。
 各地観光村のプログラムは舞踊体験、トレッキング、ホームステイなど多様だが、大きく日帰り型と宿泊型に二分される。村外の芸術家・事業経験者らと村の指導者からなる運営委員会と、日々のイベントを運営する実行委員会で構成されるのが基本パターン。アイデア・知恵を提供する外部者と村民が文化財保護などのルールを自ら定め、活動を維持する地元密着の事業が観光村の特徴だ。
 クンバン・アルム村の場合、観光村を提案したのは村近くに住む美術教師ヘリーさん(60)。国内外の絵画展で数多く入賞した実力を持つヘリーさんは素朴な自然と伝統芸能、観光で訪れる子どもたちへの絵画教室を組み合わせ、村の経済発展に貢献できないかと思案した末だった。実績が評価され、いまはジョクジャカルタやバリ州ウブドなどほかの6観光村でもアドバイザーとして迎えられている。
 タント運営委員(24)によると、村の一番の売りは芸術文化体験。自然の中で絵画制作や伝統楽器の演奏を堪能でき、社会見学の一環として小中学校の団体客が多い。観光客数は月平均約2千人で、多い日には狭い村に700人が押し寄せる。今月はすでに計千人程度の訪問予約が入っている。
 観光創造経済省は12年9月、国内観光村の活動をとりまとめる組織フォルコム・デサ・ウィサタを発足。政府は資金援助などを通じて後押ししている。先月23日にはスレマン県の観光村の一つで、第2回観光村賞授賞式(同省主催)が開かれた。マリ・パンゲストゥ観光創造経済相自らが噴煙立つムラピ山麓の観光村に足を踏み入れ、「観光村こそが地域に付加価値を生み、新しい振興につながる」と村民とともに期待に胸を膨らませた。(高越咲希)

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