医師会が全国スト 医療ミス認定に抗議 産婦人科医3人に 最高裁が逆転有罪

 インドネシア医師会(IDI)の数千人は25日、全国でストライキを起こした。最高裁が産婦人科医3人の医療過誤で妊婦が死亡したと認定、下級審を棄却し、逆転有罪としたことに猛反発。緊急治療以外の医務を行わず、患者が放置される病院も相次いだ。医師による全国規模のストは初めて。

 最高裁が医療ミスと判断したのは2010年4月、北スラウェシ州マナドのカンドウ・マララヤン公立病院で、帝王切開手術を受けた妊婦シスカ・マカテイさん(25)が空気塞栓症で死亡した事件。
 シスカさんは病院に運び込まれてから8時間経過後も経膣分娩しなかったため、担当医師は帝王切開に切り替え、胎児を取り出したが、その20分後にシスカさんは息を引き取った。
 シスカさんは2回目の出産だった。検視で死因は肺空気塞栓症と判明。帝王切開手術をするにあたり、シスカさんの家族の同意を得なかったほか、点滴交換が遅れ、空気が体内に入った疑いも出た。
 遺族はその後、手術を担当したデワ・アユ・サシアリー氏、ヘンドリー・シマンジュンタク氏、ヘンディ・シアギアン氏を告訴。3人は訴追されたが、マナド地裁は業務上の過失は認められなかったとして無罪を下した。医療行為を監視する医道審議会も医療過誤ではないと判断した。
 しかし、最高裁は3人が(1)患者が以前診察を受けていたプスケスマス(保健所)のカルテを参照しなかった(2)手術前に家族に対して、治療のリスクを説明しなかった(3)空気塞栓症に対する適切な処置をしなかった―として医療過誤を認定、求刑通り禁錮10月の判決を下した。北スラウェシ高検は今月、刑が確定したとして3人のうちアユ被告とヘンドリー被告を収監、ヘンディ被告を指名手配した。
 これに対し医師会は、医療法や保健法などの規定に沿い、調停で問題を解決すべきであり、医師に責任を押しつけることは許されないと反発。全国各地の医師が黒のリボンを付けるなどして抗議運動を開始した。
 27日、ジャワ島、スラウェシ島、カリマンタン島、バリ島など全国各地の主要都市にある保健所や公立・私立病院の医師数千人がストを決行。「医師を犯罪者にするな」などと書かれた横断幕やポスターを掲げ、デモを実施した。ジャカルタでは白衣を着た数百人の医師が最高裁や大統領宮殿(イスタナ)前に集結。再審で逆転無罪にするよう訴えた。
 西ジャカルタのダルマイスがん病院産婦人科医のナスダルディ氏は「デモに参加したのは一部だけ。病院には医師が待機している」と説明。患者に影響が出ない範囲での抗議行動だと強調した。
 だが患者が放置される病院も相次いだ。東ジャワ州ポノロゴのハルジョノ病院では数百人の患者が治療を受けられずに帰宅。救急患者以外、外来は受け入れない病院もあった。
 医師会のザイナル・アビディン会長は、勤務医を減らしてまでストを決行した理由として「仲間が被害を受けたことに連帯して抗議する必要があった」と強調した。医師会には全国で約11万2千人が登録している。
 シスカさんの姉グレース・マカタイさんは、地元テレビに「健康だった妹がなぜ病院で死ななければならなかったのか。なぜ医師は過ちを認めず、有罪判決を受け入れようとしないのか。(ストは)非常に遺憾だ」と話した。(堀之内健史)

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