「心の空白小さくなる」 父の面影探す旅 ビアク戦没遺族 

 パプア州ビアク島で死亡した日本兵の遺骨を探す政府派遣団に参加した戦没者遺族にとって、ビアク島訪問はほとんど記憶に残っていない父親の面影を確認する機会になった。遺族は「遺骨の中にお父さんもいるかな」「可能な限り何度でも来たい」と、口々に感想を語った。 
 「父もこの風を受け、空気を吸って、空を仰ぎ、地面を歩いたのかな」。有馬咲子さん(72)=福岡県行橋市=の父親は1944年6月に同島で戦死した。2007年以来、3回目の訪問だが、ビアクに来るたび、父の存在を感じることができるという。
 父が出征したのは2歳の時。「いないのが当たり前」だった父親だが、自身も家庭を持ち、夫に甘え一緒に遊ぶ子どもの姿を見ると、「お父さんというブラックホールが心に開いているのではないか」との思いを強くした。ビアクを訪れるとその心の空白が小さくなる感覚がするという。
 鑑定に先立ち遺骨の汚れを落とした25日、遺骨を一つ一つなでながら、「苦しかっただろうね」「お父さんに会わなかった」と声をかけた。
 44年12月にビアク島で父を亡くした池辺久子さん(73)=京都市西京区=も「父恋しさだけで来た」と打ち明ける。
 戦死の報が届いたのは終戦後。村の合同慰霊祭に、唯一の子どもとして参列したのを鮮明に覚えている。それからは日々の生活に精一杯で、父に関する記憶はない。
 数年前、同じ京都在住の遺族の元に、ビアク島で見つかった飯ごうが返ったという新聞記事がきっかけ。父の最期の地が知りたくなり、09年には自身も同島を訪れた。
 池辺さんは、自分の心や、兵士や父の苦痛が安まるよう、般若心経を唱えながら遺骨に接した。「1人でも多く日本にお連れしたい。その中に父も混じっていてくれたらいいな」と話している。(パプア州ビアクで道下健弘、写真も)

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