二国間関係に亀裂 密航対策など見直し示唆 豪州大使館での通信傍受 マルティ外相

 豪州の情報機関が在インドネシア豪州大使館などを通じ、通信傍受を行っていたとされる問題を受け、インドネシアと豪州政府の関係に亀裂が生じている。両国は難民認定希望者らの密航対策や対テロ分野での協力を進めていたが、インドネシアのマルティ外相は4日、公式ルートを通じた情報共有の存在意義を疑問視。通信傍受を完全に中止する確約が得られなかった場合、協力体勢を見直すことを示唆した。

 マルティ外相は会見で、「協力関係に基づく情報共有を外れて情報収集するならば、公式な枠組みが何のために存在するのか」と不快感を表明。協力体制の見直しをちらつかせ、「この種の情報収集手法は受け入れないという方針を説明しており、繰り返さないよう求めている」と強調した。
 マルティ外相は1日、訪問先の豪パースでビショップ豪外相と会談し、事実関係の説明を要求。イ外務省高官も同日、グレッグ・モリアーティ駐イ豪州大使を呼んでいた。しかしマルティ外相によると、満足のいく回答は得られなかったという。
 両国関係は1990年代後半の東ティモール騒乱で悪化したものの、2002年のバリ島爆弾テロを機とした国家警察の対テロ特殊部隊創設で豪州の支援を受け入れるなど、安全保障分野の関係強化を進めた。今年に入っても、9月の豪政権交代をまたいでラッド首相(当時)とアボット首相が訪イ。ユドヨノ大統領と会談し、同国経由で豪州に向かう密航船の取り締まりや当局間の情報共有強化で一致していた。先月30日にはアミル・シャミスディン法務人権相とスコット・モリソン豪移住相がジャカルタで会談し、密航船対策について話し合ったばかりだった。
 インドネシア大学のヒクマハント・ジュアナ教授(国際法)は「通信傍受は敵国に対する手法であり、良好な関係にあるインドネシアに用いるのはおかしい」と指摘。「政府が豪州に対して断固とした態度を取らなければ、国民の不満はインドネシア政府へ向かいかねない」と話している。
 通信傍受問題は、米国家安全保障局(NSA)による世界各地での情報収集を内部告発した元米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデンの暴露資料を基にした英ガーディアン紙などの報道で発覚。豪州情報機関は米と連携し、ジャカルタの大使館のほかバリの総領事館などアジア各国に拠点を設け、通信傍受を行っていたとされる。
 同紙オーストラリア版は3日付で、07年にバリにあった国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)で、豪国防信号局(DSD)とNSAが連携し、インドネシア治安当局者の電話番号を収集していたことも報じている。(道下健弘)

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