イスラム強硬派 活動活発化 キリスト教首長に攻勢 内相の擁護発言が後押し

 ガマワン・ファウジ内務相が地方自治体の運営をめぐり、イスラム強硬派など市民団体の参加を促したのを受け、イスラム擁護戦線(FPI)がキリスト教徒の町長や副知事の辞任を要求するなど活動を活発化させている。暴力で悪名高い強硬派を政府が容認し、少数派差別への無策ぶりを批判する声が高まりそうだ。
 「FPIは国家の財産」。24日、ジャカルタであった自治体運営に関する会議の冒頭、ガマワン内相は強硬派についてこう表現した。昨年1月、酒規制改正に抗議し、内務省庁舎を襲ったFPIに解散をちらつかせた態度から一変。自治体が協力を求めるべき団体の一つとしてFPIを挙げた。
 FPI側は、内相発言に応え「1500万人の構成員が自治体に協力する用意がある」と勢力を誇示。28日には、南ジャカルタ・レンテンアグンのキリスト教徒町長に辞任を求める方針を明かした。アホック・ジャカルタ特別州副知事ら他のキリスト教徒首長の辞任も訴えていくとしている。
 FPIは元々、スハルト政権崩壊直後の1998年当時、激化した学生デモを鎮圧するため、警視庁などがつくった官製の自警組織。現在は治安機関との結びつきは弱くなったとされるが、ラマダン(断食月)に中部ジャワ州クンダル県で実施したカラオケ店摘発の最中に交通事故で、一般市民が死亡し、強い批判を受けた。
 インドネシアの治安事情に詳しい本名純立命館大学教授によると、アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領が死去し、穏健派で知られる国内最大のイスラム団体、ナフドゥトゥール・ウラマー(NU)の関連組織が弱体化。地方で力を持っていたNU系組織が弱くなり、FPIは活発化した。地方だけでなく、首都での勢力も拡大させようとしているという。
 ジョコウィ・ジャカルタ特別州知事ら複数の自治体首長は、売春など地域社会の問題を解決する上で、自治体がFPIを含む各団体と協力する重要性は認識する一方、強硬派の暴力による問題解決は一切支持しないとの考えを固持している。
 穏健派の学術団体「宗教間対話・平和のためのアブドゥルラフマン・ワヒド・センター」のアフマッド・スアイディ代表は、内相の発言について「政府がイスラム強硬派の暴力的な活動を認めていると受け止められかねない」と懸念した。(上松亮介、写真も)

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