「コマ大戦」海外へ 中小交流、技術の見本市 12月にイVS日本

 「カツッ」。静けさの中、微かな金属の摩擦音が響く。集まった50人の視線の先で静かな戦いを繰り広げるのは、直径2センチ弱のコマ。ただのコマとは違う。中小企業の技術とアイデアが詰まる。日本の中小企業の交流の場になっている「コマ大戦」は海外企業も巻き込んで、個々の企業の事業の幅を広げようとしている。

 全日本製造業コマ大戦協会は、12月21日にジャカルタのイ日博覧会会場で海外初となる大会を開き、日本とインドネシアの企業が対戦する。インドネシア金型工業会(IMDIA)が「会員企業のインドネシア人技術者に、試行錯誤して良いものを作る姿勢を学んでほしい」(谷川逸夫事務局長)と、協会に働き掛けて実現した。コマ協会の緑川賢司会長がインドネシアを訪問し、23日に東ジャカルタのダルマ・プルサダ大学の学生や金型工業会の会員企業が参加する「模擬大会」を開いた。
 円錐形の台の上で、直径2センチ以下の二つのコマを回して先に止まった方が負け。コマは参加企業が威信を賭けて製作したものだ。
 緑川会長によると、勝負を左右するのはアイデアと製作技術、回す技術。今年2月に日本で開かれた全国大会では多くのアイデアコマが登場した。回すと遠心力でバネが開き相手の軸を攻撃するコマ。台に刺さったまま回り続け、相手が倒れるのを待つコマ。表面に滑り止めを塗り、相手の回転を落とすコマなど様々だ。
 良いコマを作れば勝てるわけではない。投げ手の回す力はもちろん、相手コマとの重量関係によって回す方向を変えるなど駆け引きも重要になる。
 日本ではすでに2回全国大会を開催。大手メディアがこぞって取り上げるほど盛り上がる。ただ、自身も中小企業を経営する緑川会長は「ただ楽しむためにやっているわけではない」と断言する。
 「かつて日本の中小企業は大手の下請けをしていればよかったが、今は上がどんどん海外に出て、仕事が韓国や中国に取られている」と協会プロデューサーの長島敏晴さんは語る。
 日本で、全国規模の中小企業同士のつながりはこれまでほぼ皆無。コマ大会は自社の技術を披露し、企業同士を結びつける媒介としても機能する。海外での大会も交流を深め、事業につなげるためだ。「コマ大戦を見た観戦者から、技術が欲しいと取引につながることが多い」。
 大企業の下請けをしていると、請負先の指示で技術が詰まった部品を公開できないことがほとんど。コマ大会は自慢の技術をコマに盛り込みアピールする「見本市」にもなっている。
 この日、12人の参加者の中で優勝した自動車部品インドカルロ・プルカサのリスキーさんには他の参加者が名刺交換に訪れ、コマの性能について意見を交わし、交流を深めていた。(堀之内健史、写真も)

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