知事一族の不正追及 バンテン州設立の名士 元憲法裁長官へ実弟が贈賄容疑 汚職撲滅委

 元憲法裁判所長官の収賄事件を捜査している汚職撲滅委員会(KPK)は11日、贈賄容疑で現行犯逮捕した実業家の姉であるラトゥ・アトゥット・チョシヤ・バンテン州知事(51)を参考人聴取した。スハルト独裁体制を支え、ゴルカル党と深い関係を築き、バンテン州設立運動の中心人物でもある名士の一族に、今回の事件で初めて捜査のメスが入った。来年の総選挙を控え、同党は一連の党関係者の汚職事件の悪影響を懸念し、党大会を延期するなど動揺が広がっている。
 アキル・モフタル元憲法裁長官への贈賄容疑で、現行犯逮捕されたうちの1人が、アトゥット知事の弟トゥガグス・ハエリ・ワルダナ容疑者。バンテン州ルバック県とセラン県の知事選結果に絡む訴訟で、ゴルカル党公認候補を勝訴させるために元長官に賄賂を渡した疑いが持たれている。
 ハエリ容疑者はバンテン州の公共事業の入札にも関与。入札者に手数料を要求したほか、下請けの業者を自ら指名、他の企業名を借用して入札に参加するなどしていたとみられ、日刊紙コラン・テンポは「元民主党幹部のナザルディン被告と酷似する方法」と報じた。
 KPKは資金洗浄(マネーロンダリング)の疑いもあるとみて、南ジャカルタ・クニンガンの同容疑者の自宅からフェラーリやランボルギーニなど高級車11台を押収。贈賄や入札などで、同容疑者はアトゥット知事の指示を受けていたとの見方を強め、同知事に海外渡航禁止令を出し、取り調べている。資金洗浄の捜査機関・金融取引報告分析センター(PPATK)は、同知事に公金流用の疑いがあると指摘している。

■州内に「独裁体制」
 アトゥット知事は2002〜05年、同州副知事を務めた後、汚職疑惑で退任した知事の代行に就任。06年の知事選で、闘争民主党(PDIP)推薦の元俳優ラノ・カルノ氏とペアを組んで初当選した。
 父の故ハサン・ソヒブ氏は、スハルト独裁政権当時から翼賛組織だったゴルカルを支え、公共事業の調整役を果たしたバンテンの名士。建設や警備など多様な企業を展開、西ジャワ州からバンテン州を分離させた立役者でもある。晩年に長女のアトゥット氏を副知事として当選させたほか、州県市の各自治体、議会に一族を送り込み「独裁体制」を築いた。
 ゴルカル党の元国会議員であるアキル元憲法裁長官や現職のハイルン・ニサ国会議員(ともに汚職容疑で逮捕)の捜査に絡み、姉とともに一族の長として州政に関与しているとされるハエリ容疑者ら一族の不正疑惑追及が、ゴルカル党への打撃になるとの見方も出ている。
 ゴルカル党のヌルル・アリフィン副幹事長は9日、今月下旬に開催予定だった全国代表者会議を11月下旬まで延期すると明らかにした。党大会ではアブリザル・バクリー党首とともに来年の大統領選に出馬する副大統領候補を選出する予定だった。
 アブリザル・バクリー同党党首は「事件は党のイメージには影響しない。(逮捕された)ハイルン議員の行為は個人的なものだった」と擁護。独裁体制と批判されているアトゥット知事に関しては「彼らの親族は適正な選挙に基づいて選ばれている」と述べ、民意が反映された結果だと強調した。

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