バリ海岸浸食、管理が課題 円借款の保全事業から4年 観光客増に貢献

 浸食が進むバリ島の3海岸やタナロット寺院で実施された海岸保全事業から4年が経ち、事業に携わった日本の海岸技術者らと公共事業省水資源総局バリ管理事務所はこのほど、同島で事業後の海岸管理について協議した。砂補充や浸食防止措置、岩壁補強などの効果はあったが、技術者などの人材不足から、インドネシア側に移管された管理体制を中長期的に構築する必要性などの課題が上がった。
 海岸保全事業は1997〜2009年、公共事業省水資源総局が円借款(87億6900万円)を充て、観光地として知られるバリ島のサヌール、ヌサドゥア、クタの3海岸、タナロット寺院で実施した。海岸の浸食を阻止する消波ブロックを海底に埋め、沖合から砂を採取し、海岸に補充する養浜を施して整備した。
 当初、周辺住民から保全工事が与える環境への影響を不安視する声もあったが、事業後に回復した海岸は観光客らが海水浴などをする憩いの場となり、地域の活性化にもつながっている。
 タナロット寺院では、04年の工事前の年間海来場者数が約5万人ほどだったが、工事後の06年に10万人を超え、07年には20万人が訪問。近隣のホテルの宿泊客数も増加したという。
 しかし、継続的な海岸管理体制は十分とは言えない。海岸管理には定期的な砂の補充や、浸食状況など海岸環境を管理監視していくことが必須で、同島の海岸線約438キロのうち約182キロで浸食被害が発生し、現在まで約100キロは手つかずの状態という。
 国や州が中長期的な政策を策定し、整備を担当する技術者の人材育成が急務となっており、公共事業省からは技術や知識が蓄積するための継続的な支援要請があったという。
 事業にアドバイザーとして携わってきた財団法人土木センターの宇多高明常務理事は「海岸を再生させることで、文化の継承にもつながり、経済が活発化することも証明できたと思う。自然体系を保護することが観光資源となり持続的な地域作りにつながっている」と話す。
 今回の討論会では、日本側の宇多常務理事が沖縄での取り組んだ養浜事例を用いた事業後の海岸の技術的観点からの問題点を、九州大学大学院工学研究院環境社会部門の清野聡子准教授が砂浜維持による地域文化継承への貢献などについて発表した。
 またヌサドゥアでは先月24日から、世界の海岸問題を話し合うアジアパシフィック海岸国際会議(APAC)が開催された。各国から400人以上の海岸研究者・技術者が参加し、日本からも30人以上が出席。バリ島を含むインドネシアの海岸問題について協議した。(小塩航大)

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