ブロッグの権限拡大 食糧安保の強化目指し 大統領が指示 コメ以外の穀物も安定必要

 ユドヨノ大統領は6日、食糧調達公社(ブロッグ)にコメ以外の食料についても価格調整機能を持たせ、権限を拡大する方針を示した。ブロッグは、スハルト政権下では大統領直轄機関として主要穀物の調達に独占的権限を持ち、汚職や縁故主義の巣くつとなった機関。アジア通貨危機(1997年)を契機とした国際通貨基金(IMF)の支援を経て、権限をコメのみに縮小していたが、近年、世界的に食糧安保を強化する動きが高まる中、インドネシアでも再び組織の再活性化を図ることになった。
 ラマダン(断食月)期間中、各省庁を視察し、内政問題に注力する方針を示しているユドヨノ大統領は同日、農業を議題とした閣議を、南ジャカルタ・ラグナンの農業省で行い、その後の記者会見で明らかにした。
 地元紙などの報道によると、同時に、土地の転用に関する規制も厳格化し、十分な農地を確保するほか、農業インフラ整備に力を入れ、食料自給率の向上を目指す。
 2億4千万人の人口を抱えながらも食糧の完全自給に至っておらず、海外の穀物相場に左右されるという食糧安保の弱点を克服するのが狙い。
 ユドヨノ大統領は、スハルト時代に強大な権限を持ったブロッグが、民主化時代の流れの中で権限の削減が図られてきたことを説明した上で、現在は状況が変わっていると指摘。「価格の安定という役目を果たせるよう、具体的な機能を与える」と述べた。どの品目の価格調整を担わせるかについては明示しなかったが、砂糖、トウモロコシ、食肉、大豆の4品目が念頭にあるとみられている。
 ブロッグの権限拡大は、原油や穀物の国際相場が高騰した08年から検討されてきたが、最近の輸入大豆の価格高騰が検討に拍車をかけた。事業競争委員会(KPPU)も食料価格の調節機能については、「民間ではなく政府の役目」として、権限拡大を認めている。
 今年7月のインフレ率(消費者物価指数=CPI=の上昇率)は、ラマダン(断食月)に入ったことも重なり、前年同期比4.56%と物価上昇が目立つようになった。今後、穀物相場の動き次第ではさらなるインフレも懸念されるため、政府が市場介入などを通じて積極的に価格の安定施策を図っていく姿勢だ。
 最近の食料供給をめぐっては、6月以降には、大豆の最大供給国である米国の干ばつによる価格高騰が国内市場を直撃。輸入大豆価格は1キロ当たり5千ルピア前後で安定していたものが、約8千ルピアまで高騰し、業者がテンペや豆腐の製造を一時中止する騒動に発展するなど、脆弱性が表面化していた。
 インドネシアは世界第3のコメ消費国で、年間1人当たりの消費量は139キロに上る。一方、2010年からコメ輸入国に転じ、昨年はタイ、ベトナム、インドなどから190万トンを輸入した。
 国際価格に左右されやすいため、輸入依存度体質から脱却し、早期の完全自給を達成することも課題の一つ。
 大統領はこの日、国内の増産方針も打ち出し、十分な農地を確保するために、農地の宅地や工業用地への土地転用に関する厳格な規制の必要性を指摘した。灌漑設備など、農業を促進するインフラ整備を整える考えを示し、「2014年には、千万トンのコメの余剰生産を生む」との目標を掲げた。

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