民主党浮揚に権力利用 閣僚の候補を宣伝 大統領予備選

 来年7月の大統領選挙に向け、大統領予備選の候補者を発表した民主党が与党の立場を利用し、政府機関の広告や国営テレビの党大会放送などを通じた広報活動を展開しているとの批判が出ている。11候補のうち、ギタ・ウィルヤワン商業相とダフラン・イスカン国営企業担当国務相は現職閣僚で、駐米大使なども名を連ねる。後継者選びに苦心するユドヨノ大統領が民主的な選出方法を強調し、汚職事件で失墜した党勢の浮揚に生かそうとの思惑も見え隠れする。
 非政府組織(NGO)「リンカル・マダニ」のライ・ランクティ代表は23日、ギタ商業相が商業省の政府広告を利用し、自身の知名度向上を図っているとして、民主党予備選実行委員会に証拠となる横断幕や街頭看板、長距離列車の座席広告の写真などを提出した。
 広告では「誇りを持って民族の子の商品を使おう」と国産品奨励キャンペーンを展開。ジャカルタの大通りに設置された電子掲示板や看板などで、国産品の文字は小さく記され、ギタ氏の写真が強調された政府広告が目立つ。
 ギタ氏はこれまで「民主党の予備選出馬が公務の障害になりかねない」として、ユドヨノ大統領に口頭で辞意を伝えたと明らかにしたが、大統領はまだ承認していない。
 同様に同党予備選に出馬するディノ・パティ・ジャラル駐米インドネシア大使も辞意を表明。外交官から政治家に転身し、外務省の公務から離れるとしているが、まだ受理されておらず、公務員の予備選参加や公職辞任をめぐる議論が続いている。
 一方で、インドネシア最大の新聞グループ「ジャワ・ポス」を率いるダフラン国務相は元新聞記者らしく、自身の新聞に健筆を振るっている。オバマ米大統領が使った「ホープ」という言葉を使い、「製造業のホープ」と題するコラムを連載。国有企業の活動を詳報する紙面を展開している。ほかにも自伝や著書を多数出版し、大臣としての公務の広報に力を入れている。
■与党偏向に批判も
 予備選運営をめぐる話題づくりは党の戦略に過ぎないとの見方は根強い。予備選を通じ、党内外の候補を列挙し、民主的に選出する過程を宣伝することで、党幹部が関与した一連の汚職事件で失墜した党の信用回復を狙っているとの指摘だ。予備選実行委員会は予備選予算に400億ルピアを投じると運営の透明性を強調するなど、2010年党首選で浮上した公金不正流用疑惑のイメージ刷新を図る。
 しかし、2年越しの汚職報道に対抗しようと、民主党が国営テレビ局(TVRI)に協力を要請したとの疑いも出ている。TVRIは予備選に出馬する11候補を公表した22日の党大会の様子を、2時間半にわたり放送。その後、TVRIのファルハット・シュクリ社長が編集局や番組編成局の反対を押し切り、与党の要請に応じて放送させたとの証言がTVRI内部から出ている。
 スハルト長期独裁政権がプロパガンダに使用した国営メディアに対する監視の目は厳しい。日刊紙コラン・テンポは公共放送の規定に反したとしてTVRIを非難。厳重措置を求められたテレビ番組監視機関・国家放送委員会はTVRIに警告文を送付した。(配島克彦)

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