「世界に誇れる製品を」 独自技術で勝負 佐藤繊維の4代目社長

 日本貿易振興機構(ジェトロ)、インドネシア日本友好協会(PPIJ)などは29日、繊維製造・販売を手掛ける佐藤繊維(山形県寒河江市)の4代目社長・佐藤正樹氏を講師に招き、中央ジャカルタのホテルで「モノづくりセミナー」を開催した。佐藤氏は情熱を持って、独自技術を蓄積していくことの必要性を説いた。
 1932年創立で、紡績糸などを作っていた佐藤繊維は2009年、米国のオバマ大統領の就任式に同伴したミシェル夫人が着用したカーディガンに同社の糸が使用されたことで注目を集めた。
 佐藤社長が家業を継いだのは92年。当時は低価格の中国製品などにシェアを奪われ、日本の繊維産業全体が衰退していた。そんな中、海外製品と差別化したニット製品を作ってほしいという顧客の要望に応えるため、新機材を導入し斬新なデザインの製品を作った。
 売れ筋は良かったが、翌年には市場に他社の同じ製品が並んだ。「資金力のある大手は機材を導入しすぐ生産ラインを整えてしまう。当社のような中小企業では勝てないと感じた」と佐藤社長は振り返る。
 会社の存続を賭け、打開策を練っている時、イタリア人の工場長と出会い、モノづくりに関する考えが変わった。
 「世界のファッションの基礎はこの工場から始まっている」と語った工場長。顧客のニーズに合わせ、製品を作っているだけでは生き残っていけない。生産者が主体となって製品を開発し、独自の技術を蓄積することで流行を自ら作り出していく必要があると感じた。佐藤社長は「値段が高くても世界で一つだけの製品を作る決意が固まった」と語る。
 佐藤社長は、大量生産や工業化を中心とした経済は曲がり角を迎えていると指摘する。「その時こそ、自社で培った技術や人材を活用して世界が驚く商品を提供できる」と力を込めた。
■宣伝活動も大切
 参加者から「繊維のモノづくりで職人の存在はどのように変化したのか」という質問が上がると、佐藤社長は「機械化の波で職人の仕事が奪われるようになったが、雇用を守り続けていくためには、製品開発と広告宣伝に注力し、独自技術とブランドを確立することが重要だ」と、生産だけでなく、作った製品を売り込んでいく宣伝活動の重要性も説いた。同社は01年、自社ブランド「M.&KYOKO」を立ち上げ、ニューヨークの展示会などで現地アパレルメーカーや繊維業者にアピールした。 
 05年には南アフリカに生息するアンゴラヤギの毛に着目し、1グラムの原料から52メートルの糸を紡ぎ出すことに成功。これにより極細モヘア糸が可能になり、素材が持つ独自の柔らかさを実現した。その功績が認められ、09年には第3回モノづくり日本大賞の製品・技術開発部門で経済産業大臣賞を受賞。現在、同社の製品は世界中の展示会で注目を集めているという。
 セミナーは、日本のモノづくり精神を通じ、企業理念などをインドネシアに伝えようと松下ゴーベル財団の後援を受け、開いているもので今回が4回目。インドネシアのファッション産業、繊維産業関係者など150人が参加した。

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