仏教寺院で爆弾爆発 3人軽傷、活動は続行 ロヒンギャ弾圧に反発か 西ジャカルタ・クボンジュルック

 4日午後7時ごろ、西ジャカルタ・クボンジュルックにある仏教寺院「エカヤナ仏教徒センター」の入口付近でビニール袋に入った手製爆弾が爆発した。参拝中の3人が腕などにかすり傷を負ったが、パニックにならず、説法は続けられた。爆発力は低く、近くのガラス窓や建物に影響はなかったが、寺院内から不発の2袋が見つかった。近年、インドネシアで仏教寺院を標的にしたテロは初めて。警察は、ミャンマーで続く仏教徒によるイスラム系少数民族ロヒンギャへの弾圧に反発する、過激派勢力の犯行との見方を強めている。

 警察の調べによると、4日午後7時ごろ、同センター本堂のガラス張りの入口付近で、緑色のビニール袋に入った爆発物が爆発。近くにいた3人が軽傷を負ったが、現場にいた信者の医師の応急処置を受け、帰宅した。当時、約300人の信者がいたが、小規模な爆発だったため、解散せずに参拝を続けたという。
 その後、本堂内の下駄箱や仏像付近でビニール袋に入った爆発物2個が見つかり、駆け付けた警察機動隊が撤去した。爆発したビニール袋には、約3キロの爆発物や携帯電話、鉄の破片、釘、コード、電池などが入っており、遠隔操作で爆発したとみられる。
 寺院関係者は地元メディアに対し、監視カメラには男2人が二輪車で乗り付け、うち1人がかばんを寺院内に持ち込む様子が映っていたと証言。「われわれはロヒンギャの叫びに答える」と書かれたメモが置かれていたという。
 リクワント警視庁報道局長は昨年9月の西ジャカルタ・タンボラ、西ジャワ州デポック市での爆発事故を挙げ、過激派が造る爆弾と似ていると指摘。スタルマン国家警察刑事局長は5日、「テロリストの犯行」とみて捜査を進める方針を示した。同事件を受け、国家警察は全国各地の仏教寺院で警備を強化している。
 国家警察は5月、中央ジャカルタのミャンマー大使館への爆弾テロを計画したとして、インドネシア人2人を反テロ法違反の疑いで逮捕した。インドネシアではミャンマーでの多数派仏教徒の迫害から逃げてくるロヒンギャが多い。イスラム団体などがミャンマー大使館に抗議デモを起こしており、一般市民の間でも同じムスリムのロヒンギャへの同情心は強い。
 ユドヨノ大統領は5日、早急な事件解決を警察に命じた。スルヤダルマ・アリ宗教相は爆発があった寺院を視察。神聖なラマダン(断食月)に起きた爆弾テロに遺憾の意を示した上で「事件に刺激されてはいけない」と呼び掛けた。
 エカヤナ仏教徒センターは「煽動されず、(犯人を)憎まず、すべての人々に愛を注ごう」と呼びかける声明を発表した。
 同センターは1995年に設立。付近にはトリサクティ大、タルマヌガラ大、ビナ・ヌサンタラ大など大学が集まり、学生の信者も多い。南ジャカルタやバンテン州タンゲランなど首都圏各地をはじめ、地方から訪れる人もいるという。僧侶の1人は「最も多くの信者が訪れる日曜の参拝に、不審者が紛れているかどうかを確認することは難しい」と話した。
 同地区は高級住宅と下町の民家が隣接する密集地。華人の住民も多く、日曜朝の参拝は中国語で行っている。近隣の華人住民ヤントさん(67)は、爆弾が爆発したのはブカプアサ(1日の断食明けの食事)直後で、同センター前の通りは人通りも多かったと話す。「同センターは診療所などを保有し、住民にも開かれた宗教施設。これまでムスリムら異教徒との間で問題はなかった」と語った。(配島克彦、上松亮介)

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