強硬派に非難集中 大統領「厳重措置を」 断食月中のカラオケ店襲撃

 イスラム強硬派団体のイスラム擁護戦線(FPI)が中部ジャワ州クンダル県でラマダン(断食月)中の取り締まりと称したカラオケ店襲撃中に交通事故を起こし、一般市民を死なせた事件で、ユドヨノ大統領をはじめ政府関係者がFPIへの非難を強めている。事件では酒類販売や娯楽施設の違法営業の摘発をめぐり、警察との根強い癒着関係も明らかになり、強硬派の暴力行為を看過してきた警察の内部改革を訴える声が高まっている。
 今回の事件は、強硬派がラマダン中に娯楽施設や飲食店を襲った暴力事件というだけでなく、一般市民が巻き込まれ、交通事故死したことで波紋が広がった。
 地元メディアによると、問題の発端となった18日の事件当日、FPIの中部ジャワ支部長らはラマダン中の違法営業を確認するとして、地元警察官3人とともにクンダル県のカラオケ店「アラスカ」を訪れ、閉店していたことを確認した。事前に警察の諜報員に「カラオケ店は売春の巣窟になっている」と通報していたという。
 FPIのメンバーはその後、近くのガソリンスタンドで給油後、代金を払わずに立ち去ろうとしたことなどから従業員らと小競り合いになり、メンバーがスタンドや近くの屋台を破壊。これに怒った住民に追い掛けられたFPIの車がオートバイに追突、50メートルほど引きずり、女性が死亡した。
 さらに19日にも、FPIは南スラウェシ州マカッサル市で酒を売った飲食店を襲撃。動画投稿サイト「ユーチューブ」に店内を荒らす様子を収録した動画が投稿され、火に油を注いだ。
 ユドヨノ大統領はFPIを厳しく非難、警察に暴力行為を厳重に取り締まるよう命じた。また「中東のイスラム知識人からも(インドネシアは)暴力集団を放置していると非難された」と外国も注視していると明らかにした。
 大統領に対し、ハビブ・リジクFPI代表は「汚職まみれの民主党を率い、礼拝も怠るとされる大統領は売春を取り締まらず、イスラムを冒とくしている。反イスラムの負け犬だ」などと対抗姿勢をむき出した。この声明を掲載したFPIのウェブサイトは24日、ハッカーによって改ざんされた。
 ジョコ・スヤント政治・法務・治安担当調整相は来月施行予定の大衆団体法を適用し、FPIを解散させることも辞さないとの構えを示している。
 警察出身のバンバン・ウィドド・ウマル・インドネシア大教授は24日、FPIの暴力を看過してきた警察の構造改革が先決と強調。「警察内部に犯罪集団とつながり、政治的利益や金銭を求める勢力がおり、取り締まりが難しい」と癒着が問題を複雑にしていると指摘した。
 一方、インドネシアの治安事情に詳しい本名純立命館大教授は、1998年の創設以降、放置されてきたFPIが問題視されるようになった背景について「FPIがこれまでの警察とのつながりをなくしつつある」と分析する。
 創設時は治安の安定化という役割があったが、現在FPIと手を組んで利益を得られる勢力は少ないと指摘。「成熟し始めた警察がFPIのようなプレマン(チンピラ)集団との戦いで強い姿勢を示していくのではないか」と話した。

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