説教師の小口投資は違法 金融庁の判断で波紋 テレビで人気 絶頂のユスフ氏

 金融機関を監視・規制する金融庁(OJK)は22日、テレビ説教師ユスフ・マンスル氏(36)の投資事業「パトゥンガン・ウサハ(合弁事業)」を違法運営と判断、会社登記など法的手続きをするよう求めた。芸能人としても多大な影響力を持つ説教師が支持者などから個人投資家を募り、小口投資による複数の事業参画を呼び掛けていたことから、波紋が広がっている。    
 ユスフ氏はジャカルタ生まれのブタウィ人の新進実業家。ビジネスに失敗し、2度の投獄経験があるが、バスターミナルでのアイス売りとしてゼロから再出発し、車の修理所やレストランなどを経営するまでに成長。近年はホテルなど不動産業も手掛けていた。
 投獄や事業の成功談などを語る説教師としても人気を集めるようになり、テレビ番組にも頻繁に出演。メディア露出で得た知名度を利用し、支持者らから小口投資を集めて事業展開する手法は、絶大な人気を得ながらも、2007年の重婚騒動で姿を消したアブドゥラ・ギムナスティアル氏(通称アア・ギム)から学んだという。
 ユスフ氏の投資計画の一つ、バンテン州のトパス・ホテル買収では、一口120万ルピアの出資で会員資格を与え、利潤の8%を還元するとうたい、これまでに2千人以上の個人投資家から約240億ルピアの出資金を集めていた。
 また国内の資源や資産が外国資本に占有されているとして「インドネシアを買い戻そう」と投資を呼び掛けてきた。100万ルピアなど比較的小口の投資でも、多数の支持者が集まれば銀行や保険会社、テレビ局の買収など大規模事業も可能と訴えた。
 これに対し、金融庁は同事業が資本市場法(1995年法律第8号)に違反していると指摘し、新規投資受け入れの一時中断を命じた。事業内容が事実上の株式公開・公募に当たるため、株式会社として登記後、改めて事業申請する必要があるとしている。
 同事業は投資金を管理する法的機構を持たず、個人からの投資がユスフ氏個人名義の銀行口座で管理されていることや、投資家への投資証明が株式でなく、ユスフ氏からの投資証明書のみであることなど、複数の問題が指摘されている。
 金融庁は現時点で個人投資家からの抗議は報告されておらず、ユスフ氏が投資金を返還する必要はないとしている。
 3月には国内初のシャリア法に基づいた金投資会社「ゴールデン・トレーダーズ・インドネシア・シャリア(GTIS)」内で10億ドル以上の横領が報告されるなど、宗教関係者の関与した汚職事件が過去数カ月間に続出した。資本市場専門家のヤヌアール・リズキ氏は金融庁に対し、ユスフ氏の事業内での横領の有無に関し、詳細な調査を求めている。
 著名説教師の違法投資騒動に対する地元メディアの関心は高い。日刊紙テンポは23日付特集面で、他事業での負債を返済できず、2度の投獄経験のあるユスフ氏が、施しによる奇跡を信じるようになったとの逸話を紹介。TVワンなどテレビ各局はユスフ氏のインタビューなど特番を放映している。(宮平麻里子)

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