インフレ加速の懸念 食料品、高止まり 政府は輸入で防戦 牛肉高で一進一退

 食料品価格が高止まりし、インフレ率を押し上げる懸念が高まっている。来月1日に発表される7月のインフレ率は、6月の燃料値上げの経済への影響を測る物差しになる。政府は輸入や流通状況の監視強化を通じ、価格抑制を図っているが、レバラン(断食月明け大祭)前の需要増や業者による価格調整などの不安要因もあり、予断を許さない状況だ。
 高騰する食料品の中でも焦点が当たっているのは牛肉。例年、レバランには消費が急増する。今年はラマダン(断食月)前に首都圏で1キロ当たり7万ルピア台だった価格が現在は9万〜10万ルピア台で推移。地方では10万ルピアを大きく上回っているところもある。
 農業省によると、インドネシアは年間の牛肉消費量のうち15%前後を輸入でまかなっている。政府は牛肉自給を促進するとして、輸入枠を設定し、上限を超える輸入量を規制。農業省が輸入枠を輸入業者に割り振る仕組みをとってきた。業者間の競争がなく、地元紙は、牛肉価格は東南アジアの他国と比べても高い水準になっていたと報じている。牛肉輸入枠の配分をめぐる収賄の疑いで福祉正義党(PKS)の前党首が起訴される汚職事件も起き、制度の不透明性も指摘されている。
 ハッタ・ラジャサ経済担当調整相は17日、牛肉価格を安定させるとして輸入枠を撤廃すると明言。ギタ・ウィルヤワン商業相は牛肉輸入を商業省の管轄にして輸入許可取得も簡易化し、業者間の競争を促す考えを示した。近く法令を発出する方向だ。
 ユドヨノ大統領は18日、閣議で関係閣僚に物価抑制を指示。閣議後、ハッタ調整相が語ったところによると、食糧調達公社(ブログ)は16日、豪州から第一弾として牛肉12トンの空輸を開始。17日、首都圏の45市場で小売り業者、消費者に安価で供給した。豪州から計3千トンを輸入する。
 ハッタ調整相は小売り業者の「売り渋り」や価格協定のカルテルをけん制。「倉庫に多量の在庫があり、ブロッグの供給を断る業者もいた」と語り、「(小売り業者は)暴利を得ようとしないでほしい」と安価な牛肉供給に協力を求めた。
 ギタ商業相は12日、卸売り業者、畜産業者などを集めて「国内に10万9千頭の肉牛がいるが、(牛肉販売のために)処分されず、畜産場などにいる」と指摘。商工会議所(カディン)は牛肉、鶏肉、砂糖、大豆、トウモロコシ、コメの主要な食料品で、カルテルの疑いのある取引高は11.34兆ルピアに上ると発表し、流通システム是正の必要性を訴えた。
 食料品の価格高騰が、インフレ率を押し上げることが懸念される。アグス・マルトワルドヨ中銀総裁は、17日の記者会見で7月のインフレ率は前月比2.38%を上回るが、今年のインフレ率は7.2〜7.8%に抑えられると強気な見方を示した。だが、燃料値上げ、ルピア安による輸入品の値上がり、断食月、断食月明け大祭の需要増が重なっている。ユドヨノ政権で燃料値上げを実施した05年と08年はそれぞれ17.11%、11.06%と高いインフレ率を記録していた。(吉田拓史)

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