ネットで過激思想拡散 言論規制に慎重姿勢 政府 爆弾・銃器製造も指南

 逃亡中のイスラム過激派指導者が警察への攻撃を呼び掛けた動画が動画共有サイトのユーチューブに投稿されるなど、過激派組織の勧誘や宣伝、知識の共有といった活動がネット上で公然と行われている。情報通信省は過激思想を広めるサイトを閉鎖しているが監視には限界があり、いたちごっこが続いている。ネット上の言論を対象にした法規制には慎重意見も根強くある。               
 「甘い味がするため、ジュースやお菓子として偽装できる」。あるブログでは、ダイナマイトの原料になるニトログリセリンの詳細な調合方法に添えて、使用時の「ヒント」も紹介している。
 このブログではほかに、爆弾や銃器の製造方法なども解説。ジハード(聖戦)についての解釈や、服役中の過激派らを作者としている文章もある。ほかのブログでも、インドネシアでイスラム国家の樹立を目指し、闘争を呼び掛けているものなどがある。
 通信情報省は2011年だけで、「原理主義的」と認定した約300サイトをブロックしたが、無限に広がるネット上を完全に監視するのは不可能で、削除しても簡単に新たなページが作られる状況が続いている。
 フェイスブック(FB)などの交流サイト(SNS)も気軽に意見や情報が交わせる特性から原理主義をテーマにするコミュニティーも形成されている。
 インドネシア語で運営されている過激派のウェブサイト「アラフマ」のFBには、15万を超える「いいね!」が付けられている。シリアやアフガニスタン、エジプト、ロヒンギャなどのムスリムに関するニュース、インドネシアのテロ組織を擁護する情報を掲載。アラフマの出版物の宣伝もあり、本に関する討論会募集や送金先の銀行口座なども載せている。
 10年、アラフマの編集長は反テロ法違反の罪で禁錮5年の判決を受けたが、追及されたのはテロ組織への関与で、サイトに掲載した情報の責任は問われなかった。同編集長は昨年刑期を終え、出所している。
 原理主義研究センターの調べではFB上で、少なくともイスラム原理主義を掲げる18のグループが存在し、参加者は計7千人に上る。国内で、50〜100人がこの2年間でFBを通じて武装組織に参加したとみられている。
 2002年のバリ爆弾テロ事件直後に制定された反テロ法には、過激派の言論を規制する条項はなく、宗教間の対立増長や中傷には刑法を適用している。世界最大のムスリム人口を抱える一方で、米国とインドに次ぐ民主主義の大国との自負もあり、政府はネット上の言論規制には慎重な姿勢を示している。(道下健弘)

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