イスラム政党PKS 選挙資金  閣僚から調達 目標額は210億円

 政府の牛肉輸入事業に絡んだ汚職事件で、イスラム保守政党の福祉正義党(PKS)が党の出身閣僚を通じ、農業省、情報通信省、社会省から来年総選挙の資金調達を図り、計2兆ルピア(約210億円)を目標額に掲げていたことが発覚した。清廉なイメージと強固な基盤を持つ同党への打撃となるだけでなく、政党が運営資金源を確保するために閣僚ポストに執着してきた実態が明らかになり、政党と政府の関係も改めて問われそうだ。 

 汚職撲滅委員会(KPK)による輸入牛肉事件の捜査や別件の汚職事件の裁判で、PKSの選挙資金調達に絡む詳細が次々と判明している。
 地元メディアによると、複数のPKS幹部と実業家ユディ・スティアワン被告(南カリマンタンの汚職事件で公判中)が昨年会合を開き、来年の総選挙に向けた資金調達について協議。各地の実業家らに支援を要請したほか、農業省から1兆ルピア、情報通信省と社会省からそれぞれ5千億ルピアの目標額を挙げたことが発覚した。
 PKSが現内閣に送り込んでいる閣僚4人のうち、研究技術担当国務相を除く3人に協力を呼びかけ、閣僚ポストを利用して選挙資金を調達する計画だったとみられる。
 会議室のボードに書き込まれた資金源一覧表によると、3省のうち農業省が中核となり、同省の三つの総局から資金を調達する予定で、役人から国会の作業部会レベルまで協力を求め、予算の不正流用を画策していた。
 ユディ被告は、前党首のルトフィ・ハサン・イスハク容疑者、アニス・マッタ党首、ヒルミ・アミヌディン最高顧問会議議長らに資金を渡していたほか、昨年9月、PKSの国会議員30人のトルコ視察旅行の旅費165億ルピアも提供したとみられる。
 一連の支援の見返りの一つとして、PKS出身者が州知事を務める西ジャワの州営西ジャワ銀行から千億ルピアの融資を得ていたことが発覚。昨年12月、南カリマンタン州の学校備品調達事業に絡む汚職事件で摘発され、PKS幹部との癒着が明らかになった。

■現党首にも疑惑

 こうした党資金を一括管理していたのが、女優らへの資金流用などを追及されているアフマッド・ファタナ容疑者。党の中央執行委員会や地方支部だけでなく、党出身の閣僚にも働きかけ、資金運用の調整役として暗躍していたことが判明した。
 ルトフィ容疑者は党首に就任する前、党の会計局長だったこともあり、学生時代以来の友人でもあるファタナ容疑者とともに資金調達を主な党務にしていたとみられる。
 これまでの調べで、ルトフィ容疑者逮捕直後に就任したアニス党首も、さまざまな資金を受領していたことが分かっている。地元メディアに対し、同党首は「ファタナ容疑者と面識はない。彼はPKS党員でもない」と関係を否定していたが、KPKが入手した会議の音声記録を聞いて驚き、「捜査を中断してほしい」などと要請したという。
 昨年以降、ユドヨノ大統領の与党民主党が汚職事件の捜査対象となり、党首や出身閣僚、副幹事長、会計局長ら元幹部の訴追が進んでいるが、党首選など党への不正流用の全容は究明されていない。
 党運営の実態が暴露されたPKSは「スハルト政権崩壊後に結党した清廉なイスラム政党」とのイメージも失墜し、イスラム団体を中心とする強固な支持基盤も揺るがしかねない事態に発展している。(配島克彦)

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