【下請けサバイバル】(3)経営編 法務・税務も把握を

 インドネシア経済への地元経営者の認識が「上り坂」から「踊り場」に変化する中、経験豊富なベテラン日本人経営者に課題と解決方針を語ってもらう座談会の3回目。インドネシアと日本の企業風土の違いなど経営を取り巻く状況がテーマとなった。

 B「さて前回出たCさんの話だと、ジョイントベンチャーが今後の理想の進出形態みたいな感じだったけどどうかな」
 A「税務面でのメリットとしては、会計事務所や法律の情報が得られることがある」
 C「きちんとした会計処理をしていないと減価償却も認められず、還付請求のときに5年分の所得税の納入を迫られる日系企業も出ている」
 A「ローカルな会計事務所は言葉が通じないので、不安だから頼むに頼めないし。ただ、日本人がいる会計事務所でもしっかりしているところに頼まないと、後々問題になるケースあるから気を付けるに越したことはない」
 D「評判のいい事務所は忙しすぎて、ローカルスタッフに丸投げすることもあるみたい」
 A「日本の中小企業庁が提供する現地の法律事務所や税務コンサルの情報は表面的で、進出企業の役に立つような踏み込んだものとは全く言えないね」

■5S運動が失敗に
 B「やっぱり中小企業の社長は人任せにしてはいけない。自分である程度勉強していけば何かトラブルがあってもしっかり対応できるし、何より交渉のときの迫力が違う」
 D「話は変わるけど、僕の知ってるジョイントベンチャーが崩壊、といったら言い過ぎかもしれないけど駄目になった例を紹介しよう。そこは資本構成がインドネシア人と半分ずつだったんだけど、『5S運動』が原因だった」
 A「そもそもインドネシア人の現場作業員になじまなかったってことなの」
 D「いや逆にものすごく熱心に取り組んでたみたい。提案もいろいろ出てたみたいだしね。ただ、インドネシア人投資家が『絵はこういうのにしなさい』みたいにどんどん指示し始めて、作業員たちが『俺たちやっぱり考えなくてもいいんだ』って思っちゃった。それで提案数が減って真面目な日本人スタッフが『インドネシア人は自分たちで何の工夫もしない』と思うようになり、仲が悪くなって納期に影響が出るようになった」

■微妙な考え方の違い
 C「確かに日本企業は下からの発想が強みだけど、インドネシアは立場が上の人に従うのが正しいって考えるからな」
 A「今のは分かりやすい例だけど、確かに微妙な考え方の違いが決定的になるのは長く海外で事業をやってきて本当にそう思う。会社の仕組みの面でもそれが出てくる」
 C「例えば株主として配当金を与えるか、技術料をメーカーに支払ったりするロイヤルティー制度にするかの違いがあるね。ロイヤルティーの場合、経費が増えると税金は減るからメーカーの立場からすれば良い。だけど逆に配当金は利益に応じて額が決まるから、株主は喜ぶけど税金が増えるのでメーカーの立場からは歓迎できないよな。インドネシア人投資家は喜ぶかもしれないけど」
 B「今までのジョイントベンチャーって比較的規模が大きかったけど、中小企業は企業体系がしっかりしていないことが多いから、経営者の考え方による部分が大きくなる。フレキシブルにインドネシアに対応できる可能性もあれば、日本の本社と同じワンマン経営で反発を買う可能性も考えられる」
 D「いずれにしろ、利益が出ている時は少しぐらい問題があっても会社は回るけど、赤字が出始めたら1年かけずに撤退を考えた方がいい。会社登記は3カ月で完了するけど、退職金の額や設備処分なんかで撤退は3年で済めば良い方だから」

■情報開示の徹底を
 A「情報開示を徹底することは一番大事だと今までの経験から言えるね。いやらしい話だけど、インドネシア人のパートナーが材料費を開示せずに不当に利益を得るパターンもある。これは日本人にも言えることで、やっぱり分からない部分があると不信感につながる」
 D「あとは現地法人の社長だね。『日本しか見てないイエスマン』でも困る。現地の事情に詳しくなろうとせずに、どうせ2、3年で戻るって前提だから覚悟もない。本社の意見を無理矢理通そうとするから、ローカルスタッフにも迷惑だし実績も上がらない。3年くらいじゃ難しいよね」
 A「会社によっては7年とかある程度まとまった期間赴任できない人は辞めてもらうって制度も出来てくるかも。サラリーマンにはきつい提案だけど、社運をかけた事業だからそれくらいやるしかないとは言える」
 C「マレーシアとか東南アジアで実績を上げたっていうだけで社長にするのも安直。お国柄はそれぞれだからね」(赤井俊文 つづく、次回は22日付7面で掲載予定) 

◇座談会のメンバー
A 電子機器メーカー社長、70代(東ジャカルタ)
B 自動車部品メーカー製造担当取締役、60代(ブカシ)
C プラント向け工業部材の合弁企業社長、60代(東ジャカルタ)
D 容器包装類メーカー社長、60代(ブカシ)

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