パプア再燃、死者続出 労使紛争衝突で8人 政治集会介入で6人

 今月十日の米系鉱山会社フリーポート・インドネシア社の労働者らと治安部隊の衝突を皮切りに、分離独立運動がくすぶるパプア情勢が悪化している。フリーポート社労組の賃金ストに絡む紛争は激化し、二十三日までに八人が死亡。一方で独立派の政治集会に治安部隊が介入し、六人が死亡した。政府は同社に対し紛争の早期解決を要求、政治集会は国家反逆と断定して強硬措置を講じる方針を示している。

■道路閉鎖で操業停止
 九月中旬から続くフリーポート社労組のストは、労働者と治安部隊の衝突を挟み、泥沼化した。フリーポート社はデモに参加した労働者数百人を停職処分にした。労組によると、同社は現在、労働者を新規雇用し、生産を復旧させていたという。これに対し、ムハイミン・イスカンダル労働移住相は、停職処分は労働法違反に当たるとの見方を示している。
 労働者は現在、トゥンバガプラ鉱山から港湾への輸送路に重機などを置いて封鎖。フリーポート社は安全面の理由から鉱山の操業を一部停止している。
 十日の衝突以来、フリーポート社のトゥンバガプラ鉱山周辺では不審な射殺事件が続発。十四日、車で移動していた労働者四人が車内で銃撃を受け、車が放火される事件が発生、三人が死亡し、一人が行方不明となった。
 さらに二十一日、武装集団が鉱山付近で車を運転中の従業員一人を射殺。その付近の住民二人が住居内にいるところを武装集団に襲われ、射殺される事件が発生した。
 労使紛争が激化し、労組の要請を受け、国会第九委員会(保健・労働)を含めた労使交渉が開始されたが、フリーポート社との協議は難航しそうだ。
■イは契約更改を要求
 ハッタ・ラジャサ経済担当調整相は先月、フリーポート社にロイヤルティー契約を更改することを要請。契約は鉱山法(一九六七年法律一一号)に基づいた内容で、ロイヤルティーを金で一%、銅で一・五%を政府に納めることを定めている。フリーポート社は「九一年に契約は延長され、三十年間有効」として更改を拒否している。
 政府は近年、二つの政令(二〇〇〇年一三号、二〇〇三年四五号)で、産出した金、銅のロイヤルティーをそれぞれ三・七五%、銅は四%としており、ハッタ調整相はフリーポート社のロイヤルティーも同水準に引き上げたい考えだ。
 銅の埋蔵量が世界一位、金が三位とされるトゥンバガプラ鉱山は、フリーポート社にとってドル箱だ。米フリーポート・マクモラン社の財務報告によると、二〇一〇年の銅事業収益百八十九億ドルのうち、六十三億七千万ドル(約三四%)、金事業収益三百五十五億ドルのうち三百三十七億ドル(約九五%)を同鉱山が賄っている。
■軍施設の裏に遺体
 一方、パプア州ジャヤプラで分離独立派の集会に治安部隊が介入した事件では死者が六人、行方不明者十七人に達した。国家人権委員会が報告した。六人の遺体は国軍関連施設の裏の山中で発見されたが、国家警察は殺害状況について明らかにしていない。
 集会で独立派は西パプア独立を宣言。警察は「大統領」に推薦されたフォルコルス・ヨボイセムブト氏ら六人を逮捕。さらに約三百人を拘束している。
 集会を開催したフォルコルス氏はパプア慣習会議議長。ジャヤプラ県教育局職員でもあり、これまで政治、社会、文化などの分野でパプア市民の権利を主張、「反政府的な公務員」として当局ににらまれてきた。
 民間告発サイト・ウィキリークスが独自に入手したの米外交文書では、分離独立派武装組織・パプア自由運動(OPM)のメンバーを制圧するため、陸軍特殊部隊(コパスス)が展開した軍事作戦に関する報告が明らかにされており、人権委は捜査当局に一連の事件の全容究明を訴えている。

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