【この店おすすめ】 港の魚は美味しい

 東ヌサトゥンガラ州州都クパン市の港の通りには毎夜、焼き魚を売るカキリマ(屋台)が数十台立つ。カキリマの古びた木の体を照らすのは、電球型蛍光灯の真っ白な光。暗い田舎町の一角が弾けたように明るくなる。不思議な光景だ。
 木造の箱にはかち割り氷が敷き詰められ、その上に熱帯の魚たちが、その美味さを見せびらかすように、整然と置いてある。鱗はきらきら光る。目玉は濁ってない。その朝捕れたばかりだそうだ。
 オートバイでやって来た家族連れが、魚を見て歩いていた。ウインドーショッピングのような感覚だろうか。路上のテーブル。4人家族が二つの魚を分け合って晩餐をしている。子どもがうるさくなにやらやっている隣で、両親はのんびりと食事している。ナイフもフォークも使わない。皆魚を手で食べる。通りは海から10メートルほどの近さだ。夜は海から涼しい風が吹く。それが時間を独特にさせる。
 フダ・ハッサンさん(24)のお父さんのお店に着いた。「これを食べるとものすごく元気が出るんだよ」とお父さんが指さしたのは、草間弥生的な白黒水玉の魚。「中国人はこれを食って元気を出すんだ」ともう一押し。その名もイカン・クラプ(サラサハタ、4万ルピア)。調理法は焼くのを選んだ。揚げることもできる。ぎょっとした。焼き上がった魚にはフォークが尖塔のように突き立っている。日本人の非常識は、クパンではなんでもない。興味深いと思った。魚はアサム・マニス(甘酸っぱい)サウスの味付け。素朴に美味しい。
 ナシ(ご飯、5千ルピア)と焼きなす、キュウリ、キャベツ、香草が付く。チャベ(唐辛子)をつけてキュウリを噛んだ。水分があふれる。キャベツもしゃきしゃきしている。香草のにおいは強い。エス・ジュルック(オレンジジュース、8千ルピア)は色が薄い。でも「本物」の酸味がある。ジャカルタでは粉末を使って黄色くすることもある。
 カキリマも家族で回している。お父さんとお母さんが料理。フダさんがその助手。中学生くらいの妹が他の場所でテ・マニス(甘茶)など飲み物を作る。小学生くらいの末妹がそれを運ぶ。家族百景。1部屋に一つテレビがある日本の家族とは隔世の感がある。

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