【この店おすすめ】バタック娘、アヒルに出会う
今回は「ベベック・ゴレン(アヒルの素揚げ)」の専門店。南ジャカルタの大学に通う女子学生、プトリ・シンティヤ・デボラ・プルバさん(22)の紹介だ。
世界最大のカルデラ湖として知られる北スマトラの名所、トバ湖湖畔で生まれ育ったバタック人だが、幼少時は目が細く、周りの人から当時大ヒットしていたテレビドラマ「おしん」の主人公に似ていると言われ、今でも「オシン」の愛称で呼ばれている。
オシンさんによると、トバ湖周辺でアヒルを食べる習慣はなく、市場へ行っても売っていない。バタックの祭事に不可欠な豚肉やコイ料理のほか、ミラやムジャイルと呼ばれるトバ湖の淡水魚が市場に並ぶ。
オランダ植民地時代から、ゴム農園などで働くジャワ出身の移民も多い土地柄だが、アヒル料理を売る食堂も屋台も見たことがなく、ジャカルタで初めて食べて好きになったという。「この店のアヒル肉は柔らかくておいしいので、たまに食べに来ます」とオシンさん。
最も人気があるのはダダ(胸、1万8千ルピア)だが、この日はすでに売り切れ。1羽丸焼き(7万6千ルピア)などもあるが、パハ(腿、1万7千ルピア)を試してみた。ポロポロとむきやすい柔らかい肉。塩味をベースにからっと揚げ、アヒル独特の臭みもない。柔らかさとシンプルな味付けで、アヒル料理好きでなくても楽しめる。
辛い料理の多いバタックの人々にとって、粗めにトウガラシをすった激辛サンバルも相性が合うという。
ほかにもソト・スルン(1万3千ルピア)などのメニューもあるが、やはりアヒル料理の専門店。各部位をいろいろと注文してみるのが良さそうだ。
同店は1986年、中部ジャワ州ソロ西部のカルトスロで開業。ジャワ生まれのアヒル料理で、店名は創業者のスラメット氏の名前から。店員によると、アヒルの肉は仕入れてから料理するまで常温で保存。冷蔵庫に入れて味が変わるのを防いでいるという。
09年にジャカルタに進出し、首都圏だけで8店を展開する人気店になった。この支店はビンタロの高級住宅地に隣接する立地ということもあり、芸能人をはじめとする著名人の客も多いという。