【振り返る2012年】 経済の躍進目立つ 14年の選挙控え停滞感も

 内需を原動力とした堅調な経済成長を背景に、経済面での躍進が目立った2012年。空前の投資ラッシュに沸くなど、中国とインドの経済失速が懸念される中、対外的にもインドネシアが新興国の雄としての名を一層知らしめた1年となった。一方、大統領のお膝元で汚職問題が深刻化し、14年の大統領選に向けた政争も徐々に表面化。ユドヨノ大統領が再選した09年以降、安定化した政情も雲行きが怪しくなってきた。12年を振り返った。(じゃかるた新聞編集長、上野太郎)

 昨年末のフィッチに続き、米系格付け会社ムーディーズが1月にインドネシアの格付けを投資適格に引き上げたのを契機に、インドネシアへの投資意欲がこれまで以上に高まった。
 自動車メーカー各社は、次々と工場の拡張を決定。部品供給や関連サービスなどの企業進出も相次いだ。
 インドネシアへの直接投資額は今年第3四半期まで、3期連続で過去最高を更新。1―9月の投資実施総額は内外合わせ、約230兆ルピア(約2兆円)を記録し、昨年の250兆ルピアを上回るのは確実になっている。
 景気低迷から抜け出せず、市場の縮小が懸念される日本からは連日のように経済視察団がインドネシアを訪れ、従来の製造業のほか、サービス産業への参入や、日本からの農産品輸出などの機会を模索する動きも相次いだ。
 しかし、「胃に穴を空けながら儲けている」(日本貿易振興機構=ジェトロ=ジャカルタ事務所の富吉賢一所長)とも評されるように、利益を上げるチャンスは至るところにあるが、一筋縄ではいかないのも事実。従来から指摘されるインフラ整備の遅れは、物流コスト上昇による競争力低下を招き、法の不確実性の問題では予見性の低さが事業運営の不安定化を増大させる要因になっている。
 それに加え、労働問題も先鋭化。急速な経済成長が社会にひずみを生じさせていることの示唆にもなった。大統領も容認姿勢を示した賃金の大幅上昇が経済に与える影響は不透明だ。
 来年以降も巡航速度での成長を続けることは見込まれるが、経済成長率が失業率低下の最低ラインである6%程度にとどまるのか、政府が目指す7%に近付くのかは、今後の政府の取り組みによるところが大きい。

■くすぶる汚職問題
 政治面では、停滞感が漂っている。「(来年の経済政策について)大切なのは、いかに今以上に悪くならないかということ」(インドネシア経営者協会のソフヤン・ワナンディ会長)というように、ユドヨノ政権のレームダック(死に体)化が顕著になり始めている。
 汚職問題では、大統領の支持母体である民主党を舞台とする事件がくすぶり続けている。大口の資金支援者である党幹部の大物実業家は公判中で、大統領側近のアンディ・マラランゲン青年スポーツ担当国務相は容疑者に断定され辞任。党首であるアナス・ウルバニングルム氏にまで疑惑が拡大している。自身の腹心であろうとも「聖域」はないとの姿勢を示したとも言える反面、大統領の求心力低下や政敵による反撃ともみてとれる。
 2期10年にわたって民主党に主導権を握られた他党だが、すでにアブリザル・バクリー党首を次期大統領候補に決定したゴルカル党、野党からの政権返り咲きを狙うメガワティ党首率いる闘争民主党を筆頭に、2014年選挙での巻き返しは必須。スハルト政権崩壊直後に海外亡命したが、徐々に表舞台に姿を現し始めたプラボウォ氏のグリンドラ党も着々と権力奪還をもくろむ。

■ジョコウィ旋風に期待
 宗教が絡む住民間の紛争や対立も目立った。中部スラウェシ州ポソやマルク州アンボン、西ジャワ州のブカシやボゴールの教会をめぐる騒動。他宗教への寛容性がより一層問われる年ともなった。
 ユドヨノ大統領は11月末、全国の自治体首長、軍管区司令官、州警本部長らを集め、住民紛争、労働問題、土地問題について、早急な解決策を探るよう指示したが、これまでのユドヨノ政権の対応を見る限り、劇的な改善策が講じられる見込みは低い。
 そのような停滞感を反映してか、ジャカルタ特別州知事選では、それまで中央政界ではほぼ無名だったジョコ・ウィドド(通称・ジョコウィ)氏が当選。中部ジャワ州ソロの市長として成果を上げた現場主義と巧みなイメージ戦略で、ジョコウィ旋風が既存の選挙戦に風穴を開けた。1千万都市の首都ジャカルタのトップとして、地に足を付けた改革が成果を生み、政治の世界に新風を吹き込むことができるかに注目だ。

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