都市インフラ輸出へ攻勢 自治体の積極関与で活路 北九州など まちづくり経験生かし
インドネシアをはじめとする新興国の活力を取り込もうと、日本の自治体と民間企業が連携し、電力供給網や上下水道など、都市機能の輸出を狙う動きが活発化している。インフラ関連機器の海外事業促進で、国内メーカーは韓国・中国勢の台頭に苦戦を強いられており、都市計画や政策も含めたパッケージ化は大きな強みになる。基礎自治体として住民サービスを担ってきた行政側も、これまでの経験で得たノウハウを生かした積極関与は地場産業の浮揚や法人税収入の増加につながるとの展望を描いている。(道下健弘、関連記事「国際化の波、乗りこなせ 4県の東南アジア戦略 シンガポール駐在員に聞く」)
福岡県北九州市や新日鉄住金エンジニアリング、富士電機、NTTデータ経営研究所は3月から東ジャワ州スラバヤ市のスラバヤ工業団地(約300ヘクタール、約300企業が入居)で、天然ガスなどによる発電と排熱を利用した蒸気を立地企業に供給する事業の可能性調査を進めている。
経済産業省の「インフラ・システム輸出促進調査委託事業」に採択されたもので、目的会社の設立を念頭に、採算性などを1年かけて見極める。将来的には、インドネシア第2の人口を持つ同市で、一般家庭への電力供給を含む広範な事業が視野に入る。
スラバヤ市の下水道整備計画を検討する国土交通省の公募事業でも、上下水道局と民間コンサルタントとの共同実施が決まった。先月から事業に入り、年度内に調査結果をまとめる。
■成果求められる自治体
環境分野を軸に国際協力を進めている北九州市は1997年から廃棄物対策で協力するなど、スラバヤ市との交流はもともと活発だった。
ただ、国内景気の低迷や、内需の先細りが予想される中、地方財政は厳しさを増す。自治体も目に見える成果を求められるようになった。市環境国際戦略課の重岡典彰事業化支援担当課長は近年の政策について「自治体間の単なる『協力』ではなく、地域活性化や税収増につながるビジネスに結びつけようというスタンスに変わってきた」と説明する。
北九州市は2010年に国の「新世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定されて以降、八幡東田地区で、ITなどで送電網を制御し、地域内の電力供給を最適化する「スマートコミュニティ」を整備してきた。立地企業約200社、住民約900人に電力を供給してきた実績をテコに、同様の基盤整備をインフラ輸出戦略の要に据えた。
■行政間のパイプで対話
都市のありかたに関わるインフラ事業は、受け入れ側の関心も大きい。事業に必要となる法令整備や支援制度の充実、許認可をめぐっては、受け入れ側自治体との意思疎通が不可欠だ。そのため、地元自治体の積極関与は、企業にとって渡りに船といえる。
新日鉄住金エンジニアリング海外エネルギー供給事業企画部の担当者は「一民間企業ではなかなか聞き入れてもらえない政策提言や許認可の面で行政間のパイプを使えるのはありがたい」と期待を込める。事業調査の段階で必要になり、受け入れ側自治体が持つ各種データも、スムーズな開示が見込まれるという。
このほか、ジャカルタ特別州では横浜市100%出資の「横浜ウォーター」など日系企業連合が昨年6月から、下水処理整備の事業化調査を進め、管理運営事業の受託を狙っている。