【この店おすすめ】 汗かきながら自慢の辛さを
南ジャカルタの大学でパブリック・リレーションズ(PR)を学ぶアリフ・ウィボウォさん(24)とハラさん(18)におすすめのレストランを訪ねると、「紹介するならインドネシア料理だね」と、意見はすぐに一致した。
大学内にも食堂はあるが、昼前後に講義がない日はよく出かけるという2人。おすすめはもちろん、店名にも冠されたアヤム・バカール(2万4千ルピア)だ。すすめられるがまま、油で揚げた豆腐とテンペをトッピングする。野菜と豆のスープ(8500ルピア)も注文した。メニューにはナマズやアヒルなどのメーンのほか、種々の野菜を選択できる。
竹を編んだ器に盛りつけられた鶏は、焼く前によく煮込んであるため、フォークを当てると簡単に骨から身が離れるほど柔らかく、味がしみ込んでいる。甘辛い味付けは白米との相性も抜群だ。
そのままでもおいしいが、2人に倣い、サンバルを付ける。なるほど、よく効いたトウガラシのパンチに加え、味噌のようなコクの強さが特徴的な味わいだ。少し付ければ鶏肉の味付けの甘さが際立つ。
2人が店を選んだ理由は、実はこのサンバルにあるようだ。ジャカルタの街にはお洒落な西洋料理や日本食レストラン、カフェもどんどん増えているが、食べ慣れたインドネシア料理を選ぶことが多いという。アリフさんは「子どものころから食べてきたサンバルはインドネシアの味」と胸を張る。ハラさんも「美容にもいい」と教えてくれた。
口の中が辛くなり過ぎたら、揚げ豆腐を少しかじる。じっくり揚げられているため、表面はさくさく。内部は日本の油揚げと厚揚げの中間のようなふわふわな食感が面白い。スープもインゲンのようなカチャン・パンジャンやピーナッツのほか、トマト、輪切りのトウモロコシなどがぎっしり詰まっており、野菜不足解消にはもってこいだ。
デザートにぴったりなのがエス・ブア(フルーツ・ポンチ、9千ルピア)。強い甘みが舌に残った唐辛子の刺激を中和してくれた。
店内に冷房はなく、天井のファンのみだが、建物の開口部は大きく風通しが良い。食後にはじんわり汗がにじんでくるが、通りから吹き込む風を感じながら、インドネシア自慢の辛さを味わうのも清々しい。 (道下健弘、写真も)