日本の社労士を導入 海外で初の取り組み 社会保障専門の人材育成 BPJSとJICA  (2017年06月17日)

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 日本の社会保険労務士(社労士)制度の導入をインドネシアで進めることが決まり、社会保障機関(BPJS)と国際協力機構(JICA)は16日、調印式を行った。3年間で、BPJS内で分かれている労働部門と健康保険部門の両方の知識を持つ社会保障の専門家「社会保障士」を育成する。日本の社労士制度を活用して社会保障制度を支援する取り組みは、インドネシアが海外で初めてとなる。 

 BPJSは現在、同じ社会保障の機関だが、健康と労働の二つの部門に分かれており、それぞれの職員が対応している。JICAと国家社会保障審議会(DJSN)がBPJS両者の間に入り、3年間で社会保障士に関する具体的な規則やガイドライン、人材育成のためのカリキュラムや教材の準備、資格の設立の整備などを進める。
 健康保険を担うBPJSクセハタンは、2019年までに全人口の加入を目指している。医療保険(JKN)への加入促進や、保険料の徴収など制度に詳しい職員カデル(Kadel)が、日本の社労士に近い役割を担ってきた。
 病院ですぐに活用できることもあり、全人口の66%に当たる約1億7千万人がすでに加入している。一方で、保険料の徴収がうまくいっておらず赤字が続いている。
 一方、BPJSクテナガクルジャアンによると、対象者の約8600万人のうち、フォーマルセクターは54%の約4600万、インフォーマルセクターは46%の約4千万人。全体の加入率は約2割にとどまっている。

■日本のノウハウで支援
 日本の社労士は、社会保険や労働保険について説明し、複雑な手続きなどを代行する役割を担ってきた。
 JICAは16年10月から、全国社会保険労務士会連合会(全社連)や厚生労働省と連携し、社労士や日本型適用徴収システムについて学んだ人材「プリサイ」や、団体・組織「カントル・プリサイ」の育成や派遣を実施。労働保険への加入や徴収を進めるパイロット事業を12地域で続けてきた。
 JICAの労働政策アドバイザーの高崎真一さんによると、住民が広範囲に散らばり、遠方にあるBPJSの事務所まで保険料を払いに行かなければならない地域では、料金の徴収が難しいことがわかった。今後はインターネットやIT技術を活用した支払い方法を取り入れていくという。
 高崎さんは「日本は60年近くかけて100%に近い加入率を実現させてきたが、インドネシアは日本の経験やノウハウを活用することで、より短期間で実現できるよう支援したい」と話す。
 JICAインドネシア事務所の安藤直樹所長は、倫理的な面も重要視しながら社労士を育てることで、汚職や不正も防ぎたいと説明。さらにベトナムなど関心を寄せている国もあり、今後は東南アジアで社労士の導入が広がる可能性もあるという。(毛利春香、写真も)

◇ 社会保障機関(BPJS) BPJSは健康保険を担当する「BPJSクセハタン」と、労災保険、老齢給付、死亡保障、年金の労働部門を請け負う「BPJSクテナガクルジャアン」の二つに分かれている。皆保険を目指すインドネシアでは、2014年1月にBPJSクセハタンが発足し、医療保険(JKN)制度を開始。15年7月にはBPJSクテナガクルジャアンが設立され、運用が始まった。

中央ジャカルタの人間・文化開発調整省で調印式が開かれ、安藤所長(右から2人目)らが出席した
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