女性警察官7000人一線へ 急増で教育に大わらわ 採用数10倍

 国家警察は来年、新規採用した女性警察官7千人を一線に配置する。女性や子どもの犯罪対策充実が目的。毎年500〜600人だった採用を一気に10倍以上にする前例のない大幅増員で、28日に初任科生が警察学校を卒業する。無事に警察官としてスタートを切れるよう、国家警察は新人研修や指導者の育成など、準備態勢構築に大わらわになっている。

 初任科生は現在、各地の警察署などで、半年間の教育・訓練の総仕上げとなる現場実習の最中。このうち警視庁ブカシ市署(西ジャワ州)では100人以上が、交通や市民応接の窓口、パトロール、留置管理業務など現場の様子を学んでいる。同署ブカシ・コタ分署交通係で指導を受けていたランプン州出身のサリニン・パンゲストゥティさん(17)は「警察官は小さな頃からの夢。地域を守れるような強い警察官になりたい」と目を輝かせた。
 女性警察官の増員は、ユドヨノ前政権が今年3月の閣議で国家警察のスタルマン長官に女性や子どもの安全対策強化を指示したのがはじまり。従来の体制では全国の警察官約40万人のうち女性は1万4千人で、4パーセントに満たなかった。しかも女性警察官の多くは広報や事務などに就く場合が多く、現場に出る割合はさらに少ない。来年からは警察署にも女性を配置する予定で、人件費など予算も確保した。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)新政権になっても方針は引き継がれ、来年も2300人を採用する予定だ。
 ただ、採用人数を大幅に引き上げるのは、人材確保や教育、その後のフォローアップの面で課題も多い。まず、人材確保のため、21歳を上限としていた年齢を22歳に、身長160センチ以上とされた基準も155センチに緩和した。高校などへのリクルート活動も積極的に実施した結果、男性初任科生1万人強に対し、女性は7千人を採用した。
 教育施設も問題になった。全国で唯一女性警察官の教育を担う女性警察学校(ジャカルタ特別州)の定員は600人で、新規採用全員の収容には及ばない。東ジャワやバリなど他州にある男子用の学校を間借りし、収容した。教育に必要な女性教官の数も足りず、各州警本部などから教官経験者を呼び戻してようやく確保した。

■JICAも助言者育成を支援 ブカシで実地研修

 新任女性警官は年明けにも各州警などに配備されるが、現場では学校で教わりきらない課題や悩みに直面することも多く、きめ細かな指導や相談役になる身近な先輩の存在が不可欠だ。そんな助言役(メンター)を育てようと、卒業まで2カ月を切った11月中旬、地域警察官育成で実績のある国際協力機構(JICA)に白羽の矢が立った。
 JICAはこれまで、ブカシ市署管内に全国で初めて女性だけの交番を設置したほか、地域警察官育成のモデル地区として、全国からの研修生を受け入れてきた。これを応用して今回、全国の警察本部から幹部候補学校を卒業した若手など90人を集め、リーダー格となるマスターメンターを育てることにした。
 今月8日から45人を一組に、各組1週間ずつ研修している。短期専門家として招いた青森県警生活安全部の栗田優子警部補や女性交番勤務員らの元で、家庭内暴力の悩み相談への対処や巡回連絡などの仕方を実地で学んだ。研修後、マスターメンターがそれぞれの持ち場で他の女性警察官に研修の内容を紹介するなどして、メンターの人数を広げていく計画だ。(道下健弘、写真も)

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