【この店おすすめ】130年の歴史を味わう
コーヒーは好きだが、違いが分かる男ではない。それでも、「創業130年のコーヒー」には特別な響きを感じるものだ。
ジャカルタで最古のコーヒーショップとされる「バクル・コーヒー」。中国広東省から移住したリアウ・テク・ソンさんが西ジャカルタで出していたご飯物の屋台で1878年、自家焙煎のコーヒーも販売するようになったのが始まり。
そのうちに、料理よりもコーヒーの方が有名になり、本格的なコーヒーショップを構えてからは、オランダ植民地政府の役人らも愛飲したらしい。
4代目になった今でも、伝統を伝えるブレンド「ヘリテージ1969」は粉末と湯を一緒に注ぎ、沈殿するの待つ「トゥブルック」で味わうのが習わし。ほかにも、ブラックで飲む場合におすすめという「ブラック・ミスト」や、クリームなどを用いたアレンジコーヒーのベースに向いている「ブラウンカウ」と、3種類のブレンドを用意。豆だけでも販売しており、250グラム入りが7万ルピア。
紹介者のイスミ・ハリダさん(26)は、近くの文化施設タマン・イスマイル・マルズキ(TIM)で演奏を披露することもあるバイオリニスト。「レトロな雰囲気が気に入っている」というように、店内はテラスや通りからの自然光があふれ、年季の入った木製のドアや窓枠、調度品を暖かく照らす。書類を山積みにしてパソコンにくびっきりの人、友人と談笑する人、ゆっくりと読書する人、思い思いの時間を過ごしている。雰囲気を生かし、モデルの撮影なども頻繁に行われるようだ。
ケーキ類のほか、パスタや各種インドネシア料理のメニューも豊富で、しっかり腹ごしらえもできる。
店名は、リアウさんが130年前、生豆を買っていた行商人の女性が頭に乗せていたかごの呼び名が由来。今では行商人はロゴに変わりガラス扉の目印になっている。付近はほかにも歴史的建造物が残り、散策時の休憩にぴったりだ。(文・写真:道下健弘)