【火焔樹】対等に語り合う (2013年12月19日)

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 インドネシア初代大統領故スカルノ氏のオランダ植民地時代から日本軍の統治を経て、独立宣言を行うまでの闘争を描いた映画を観た。
 若き日のスカルノ少年がオランダ人の少女に恋をするが、少女の父親にインドネシア人を理由に娘との交際なんぞ「許されると思ってるのか」と罵倒され屋敷をつまみ出される。これをきっかけに、スカルノ少年の心に外国人に占拠された祖国インドネシア解放への志が芽生える。
 全編を通して、インドネシアの人の目から見た歴史上の出来事が網羅されており、細かな人物描写やストーリー展開は別として、あくまで史実に忠実に描かれているようだ。日本軍の野蛮な行為も描かれている。日本のアジア侵攻を描いた日本以外のアジア諸国の日本軍の描き方は、多くの日本の人がイメージしている日本の兵隊さんとはだいぶ違う。
 この映画でも、罪のない市民を鉄砲で撃ち、日本刀で切り捨て、少女を連れ去り、強制労働させる。この辺りはどこまでが本当で嘘か正直分からないが、私がインドネシアで暮らしてきた中でインドネシアの人から聞いたことと一致する。
 日本で描かれ戦争をテーマにしたドラマや映画は多々あれど、どちらかというと主人公となる日本軍や将校たちの苦悩や葛藤を描きだすものが多く、直接的に蛮行に手を染めているシーンはほとんどない。誰もそんな野蛮な場面など見たくないだろうし、仮に事実であろうとも同胞がそんな行為をしてきたことを直視できる人は多くいないと思う。
 どんな描き方にせよ、本当のことを知りたいのは皆同じだ。本当のことを知ってその上で考える。もしこの映画をみた日本の人が、自分の中にある認識とちょっと違うなと感じることがあるならば、それは人類が犯した最大の罪である戦争に何十年経った今でも翻弄されている証拠である。
 インドネシアも独立後の歴史に翻弄され続け、ようやく自分たちの視点で自由に表現することができるようになった。表現の自由では先を行く日本が、今度は自分たちで表現し得なかった部分に遭遇し、何を考え、そしてそれをまたどのように伝えていくのか。やっとインドネシアと日本が対等に過去と未来を語りあえる時が来たような気がする。
 「スカルノ」現在公開中。(英語字幕スーパー付)(会社役員・芦田洸)

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