【この店おすすめ】ジャカルタ土着の味
インドネシア料理はどこで食べても同じだと高をくくっていたが、間違いだった。
ジャカルタの土着民族ブタウィのスープを出す「ソト・ブタウィ・ハジ・マルフ」。1943年、ブタウィ人の故ムクリス・マルプさんが始め、65年に引き継いだ息子マルフさんが父と同じ製法で営む。
今年、創業からちょうど70年を迎えた店の壁には「ジャカルタ一番のソト」などと紹介する地元の新聞記事が誇らしげに飾られていた。
「彼女の土地の料理」と照れながら店を勧めてくれたのは、北ジャカルタ・プルイットでエンジニアとして働くサトリア・ウガハリさん(25)。サトリアさん自身はジャワ人だが、ソト・ブタウィは最も好きなインドネシア料理の一つだという。
ブタウィ人の交際相手リフカ・アグスティアニさん(25)とは付き合い始めて7カ月が経つ。高校時代の親しい友人にリフカさんを紹介され、意気投合した。
店を紹介してくれた理由をサトリアさんに聞くと、美味しいのはもちろん、祖父のタヒル・ハラハップさんが生前、よく家族とともに連れてきてくれた「思い出の場所だから」だという。
国営ラジオ放送局(RRI)の記者だったタヒルさんは店でよく、取材体験を聞かせてくれた。取材中に危険な目に遭った話など、祖父の話はいつも新鮮で驚きがあったという。
サトリアさんはソト・ブタウィについて「いくら飲んでも胃もたれしない」と話す。筆者が昼時によく食べていた移動式屋台などのソト・ブタウィと違い、薄味でココナッツミルクの喉越しが優しかった。市販の調味料を使わず、今も創業以来のものを引き継いでいるという。
店のメニューはソト・ブタウィ(2種類、いずれも3万5千ルピア)と牛肉、鶏肉、ヤギ肉のサテ(10本3万ルピア)だけ。ソトは牛肉だけが入っているものか、腸や肺、胃など内蔵肉が混ざっているものか選ぶことができる。筆者にとって、腸が入っている方が歯ごたえがあり満腹感があった。(文・写真:上松亮介)