【この店おすすめ】遊び心くすぐる「公園」
南ジャカルタ、ポンドック・インダ・モールに今年4月、3階建てのレストラン街が新設された。「ストリート・ギャラリー」だ。有名ホテルのレストランや洒落たカフェが並ぶ。その中の一つ、「ザ・プレー・グラウンド」に向かった。
黒やベージュ、白の色でまとめられた店内は余計な装飾を省き、洗練された雰囲気だが、「プレーグラウンド(公園、運動場)」という店名を忘れてはいけない。見上げれば、天井から十数のブランコが吊るされている。ブランコをいす代わりにした「ブランコ席」だ。奥には、日本から駆逐されて久しいメリーゴーランド型の回転遊具の座席が見える。ドーナツ状の座面の中央にテーブルがあり、座面はしっかり回転する。客はブランコ席でゆらゆらと揺れながら会話を楽しみ、子どもたちは回転遊具席を回して喜んでいる。
メニューも面白い。店を紹介してくれた大学生のサンディーさん(23)はミルクセーキ「クッキーズ・アンド・クリーム」(4万5千ルピア)と「レジェンダリー・カツッティ」(7万5千ルピア)を、私はスパイス香るノンアルコールカクテル「スルタン・オブ・スイング」(3万5千ルピア)と「グリーンカレー・スパゲティ」(6万ルピア)を注文した。「カツッティ」はカツ丼の白飯をスパゲティに置き換えた創作料理だ。肉厚なチキンカツが卵でとじてある。濃厚で甘みのあるソースとの組み合わせが良いとサンディーさんもご満悦だ。
私に運ばれてきたのもスパゲティだが、タイカレー風のソースに絡めたもので、白身魚のフライが皿の中央に鎮座している。やや味付けが濃い印象だが、タイカレーとスパゲティの調和が楽しめる。
「ところで、あれは日本語で何と呼ぶのか」とサンディーさんが聞くので「ブランコだ」と答えた。何度答えても「プランコ(切手)か」、「ブランコン(ジャワ伝統の帽子)か」と聞き返される。噛み合ない会話もこの店だとなんだか楽しい。
サンディーさんも遊び心をくすぐられたのかインドネシアの言葉遊び「プレセタン」を教えてくれた。例えば「インドネシア・パスティ・ビサ(我々なら必ず可能だ)」というスローガンが「インドネシア・パスティ・ピザ」となる。国威発揚のお題目も形無しだ。ケタケタと笑いながら休日の午後を過ごした。(文・写真:田村隼哉)