【この店おすすめ】少し違った宮廷料理
年代物の調度品が並ぶ。東南アジア各国、中国、米国、アフリカ‥。世界中から調達された品々はジャワという基本理念の元に調和している。店名の「ロロ・ジョングラン」はジャワの人々に語り継がれる神話の美女から取った。
ジャワ文化の幻想的な雰囲気とともにいつもと少し違う宮廷料理や各地方の味を楽しみたい時はこの店だ。環境保全のコンサルタント会社で働くシニスター・グリーンさん(22)に紹介してもらった。
サテ・アヤム(焼き鳥)、イカン・バカール(焼き魚)など代表的なインドネシア料理が少しずつ独自のアレンジを施されて出てくる。
なかでも牛テールスープ(6万8千ルピア)のまろやかさに驚く。牛肉はほろほろと溶け、すぐに次のひとかけらを探してしまう。
ナシ・ブロンコス・デマ(6万8千ルピア)を頼むと、牛肉や鶏肉などのおかずについてくるワヤン(影絵人形)の顔を型取っており、思わずスマホで写真を撮る客が多いのだそう。
野菜と魚をバナナの皮で包んで焼いたイカン・パティン・ダウン・シンコン(8万8千ルピア)はほくほくの白身とくたくたの野菜にサンバル(チリソース)が抜群に合う。
庶民の味クルプック(揚げせんべい)も牛皮から作ったものやえびが丸ごと入ったものなどここではひと味違う。
店内は「ボロブドゥール」「マリリン・モンロー」「中国」などそれぞれテーマごとに装飾された小部屋があり、従業員に頼むと案内してくれる。目を引くのがスカルノ初代大統領ゆかりの品を集めた部屋だ。スカルノ氏の写真のほか、娘のメガワティ元大統領の直筆サインも掛けられている。オーナーがメガワティ氏の友人という。
シニスターさんは政府関係者などと国立公園で自然を守る仕事をしている。「環境保全」が叫ばれて久しいが常に実利の後回しになっていることに憂いを感じてきた。「インドネシアの多様な文化は豊かな自然があって育まれた」。さまざまな食材や味付けがあるインドネシアの料理もそれがあってこそだと考えさせられた。(堀之内健史、写真も)