【この店おすすめ】インド洋の巨大伊勢エビ
ジャカルタを出発して7時間、鉄道とバスに揺られて来た苦労も忘れさせる、巨大な伊勢エビに出会える食堂だ。
インド洋に面したパサール・イカン(魚市場)に併設された店舗1階には全長45センチほど、重さ1キロの伊勢エビが並んでいた。まだ生きているものもあり、堂々たる甲羅が黒光りしている。近海の浅場に棲んでいた、どれも今朝水揚げされたものという。
トロ箱の中から、身の詰まっていそうな個体を選んだ。腹に卵を抱えたメスで、店員に聞けば、オスよりもお薦めだという。塩ゆでや焼き、蒸した後甘辛いソースを絡めたものなど、好みに応じて調理してくれる。せっかくならエビだけの味を確かめようと、シンプルなボイルを選んだ。
風通しが良く、インド洋が見張らせる2階のテーブルで待つこと十数分。運ばれてきた皿には、真っ二つに割れた甲羅からはじき出されたような白い身がのぞいている。胴体部はフォークで軽く引っ張るだけでごろりとした身が取り出せる。
身はやや大味ながら、食べごたえは十分。伊勢エビだけで満腹になる贅沢はなかなか経験できない。伊勢エビは日本のものに似たロブスター・バトゥなど数種類あり、値段は調理料込みで1キロ17万〜20万ルピアほど。お買い得感も高い。
レバラン(断食月明け大祭)休暇を生かし、一家9人を引き連れボゴールからやってきたヘルマンシャさん(60)も「(ジャカルタ北部の)ジャワ海より大きな海で育ったから美味しいんだ」と、満足げに料理を口に運んでいる。
食材はエビのほかにもさまざまな種類の魚やイカ、カニがあり、ヘルマンシャさん家族のように大人数で訪れ、数種類の料理をシェアすれば、海の幸を満喫できること請け合いだ。
外の魚市場に足を伸ばせば、大小問わず魚介類の入ったトロ箱が並び、生物図鑑を見ているようで楽しくなる。ヘミングウェイの小説「老人と海」に出てくるようなカジキも丸太のように横たわり、豊かな海を象徴しているようだった。市場で買った魚を食堂で調理してもらうこともできる。
首都圏から比較的近いこともあり、近くの砂浜は海水浴やサーフィンを楽しむレジャー客でにぎわっている。宿泊施設もあるため、ジャカルタからの小旅行にぴったりだ。(道下健弘、写真も)