【この店おすすめ】曖昧な希望を叶える魔法
なるほど雰囲気が良い。ファンシーなリゾート風の内装だが、バリで量産されているようなものより格段に工夫が凝らしてある。内庭の池には上品な赤い鯉たちが泳ぎ、壁一面の大きなガラスからたっぷりとした陽光が注ぐ室内は広々としている。シーリングファンが涼やかに回る高い天井と、背の高い草が生けられた壺が等間隔に並ぶ白い壁。かちりと硬質的な木製のテーブル、ポーカーフェイスのウェイター。ドイツ銀行裏という都心の立地だが、ジャカルタの混沌とはかけ離れた静けさが漂う。
インドネシア料理レストラン「スリブラサ」。日本から来た友人が「インドネシア料理を食べてみたい」というぼんやりとした希望を見せたら、この店がいい。
牛肉をゆでた後にトウガラシとともに炒めたパダン料理「デンデン・バラッド」(9万ルピア)は豊かな肉汁が染み出しておいしい。紹介者のエファさんが、辛さを抑えてくれと頼んでくれたおかげで、真っ赤な牛肉があまり辛くない。などなど5皿を分け合い。そして談笑する。
それにつけても、若者のネットの使い方はものすごい速度で変わっている。「最近、若者の間ではメールアプリ『LINE』が流行っています」。少し前はブラックベリーに搭載された「ブラックベリー・メッセンジャー」が支配的だったが、サムスンなどアンドロイド携帯が押してきて、どのスマホでも使えるメールアプリ「WhatsApp」がうけるようになった。だが電話は課金されるので、最近はLINEへの「民族大移動」が起きている、らしいのだ。
LINEはメール、電話が無料で楽しめるし、ゲームもたくさんある。「メールで使う画が面白いんですよ」。それは精密なマンガ画でユニークだが、2万5千ルピアかかるので、課金を避けてLINEに移った最初の動機とちょっと矛盾する気がした。が、たぶん課金よりも自主的な支払いの方が、使う人の気は進むし、「若い人はいつも新しいものを探している」という彼女のとらえ方が真相か。LINEを運営する韓国IT企業NHNの日本法人はライブドアを吸収合併している。なるほど。マンガやアニメだけじゃなくて、こういうところからも日本につながるんだな、と思い帰宅した。(吉田拓史、写真も)