【この店おすすめ】 イ料理の入門講座
筆者にとって初めての記者会見場。そこに流ちょうな英語で矢継ぎ早に質問を繰り出す記者がいた。コイルル・アミンさん(25)だ。緊張するばかりの筆者にとって彼の姿はまぶしかった。現地紙の新米記者だという。同じ新米記者のよしみでインドネシア料理の手ほどきをお願いした。
「僕も普段はマクドナルドにばかり行くから」と苦笑しながら紹介してくれたのは中央ジャカルタ・サバン通りに店を構える「ワルン・デサ」だ。来イして日が浅い筆者にとって格好の入門教材といえる。
席に着くとアミンさんは数品を注文してくれた。まずは「ウェダン・ジャへ」(8千ルピア)に手を伸ばす。冷やしたショウガの飲み物だ。ショウガの風味が湿度を忘れさせてくれる。
テーブルに並んだのはパダン料理の「ウダン・サウス・パダン」(2万7千ルピア)、ブタウィ料理の「ソト・ブタウィ」(2万5千ルピア)、中部ジャワの料理「サユール・アサム」(7千ルピア)、セットにした白飯だ。多様なインドネシアの料理をバランスよく紹介してくれた。
素朴な味付けのスープ、サユール・アサムは中部ジャワ出身のアミンさんにとって「おふくろの味」だ。ただし「我が家ではもっとタマリンドを多く使う。もう少し酸味が欲しいかな」とやや不満げな様子。
白飯をサユール・アサムで流し込みながらアミンさんは経歴を語った。大学卒業後、医薬品販売の会社に勤務。机に向かい利益を追求する日々に疑問を感じ、4カ月前に新聞記者へと転身したという。流ちょうな英語は高校時代に英語ディベートで磨いたという。
大ぶりのエビを唐辛子などのスパイスで味付けしたウダン・サウス・パダンの辛さはソト・ブタウィで中和する。ココナッツミルクを主としたスープにトマト、牛肉、一口せんべいのような姿のウンピンが浮かぶ。ほのかな苦みが後を引くウンピンはメリンジョの実をひいて揚げたものだと教わった。
料理を平らげると家族の話題になった。筆者に来イを聞かされた両親の反応について尋ねられ、さして反対もなかったと答えると、アミンさんは「母は僕がカリマンタン島に行くと聞いただけで大騒ぎだったのに」と笑った。(田村隼哉、写真も)