【洪水村の移転】(上) 相次ぐ洪水、動く州政 東ジャカルタ・カンプン・プロ (2013年03月28日)

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 ジャカルタ広域が冠水した今年1月の大洪水を受け、首都圏洪水対策の要であるチリウン川治水事業が急ピッチで進められている。これまで移転計画に頑強に反対してきた川沿いの住民に対し、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)知事は州営住宅を建設・提供する案を提示。住民はそれぞれの意見の間で揺れている。洪水地帯の東ジャカルタ・ジャティネガラの村落カンプン・プロの住民に迫った。  

 その前夜も洪水だった。「いまやっと泥を掃き出したよ」。ルスマンさん(34)は苦笑する。川から1メートルの2階建ての借家。その脇を1メートル増水した濃茶色のチリウン川がかすっていた。
 家屋は2月末の洪水で半壊。自分で木材の骨組みを造り、ビニールシートで覆う応急処置を施した。電化製品も寝床も高い2階に上げ、川原につながる小道には小さなついたてをしつらえてある。
 ルスマンさんはカンプン・プロで生まれ、結婚し10年前にこの借家に移った。洪水に脅かされる日々にはほとほとうんざりしている。
 では、どうして村落を出ないのか。「この地区の家賃は月40万ルピアくらいでかなり安いんだ。外の借家は70〜80万ルピアはする」。市場の労働者の職で子ども3人を養うには選択肢は自ずと少なくなる。
 そこから下流に10メートル。カイセムさん(40)の持ち家の残がいがある。こそげ落ちたコンクリートの土台だ。1996年新築の自宅は2007年の大洪水で全壊し、バラック建てで難をしのいできた。だが1月の大洪水でバラックもろとも流された。いまは慈善団体が提供する民家に5人家族で入居する。家を失ったショックは大きく、「何も考える気がしない」。彼女の夫も市場の労働者だ。
 水源の西ジャワ州ボゴールで雨が降れば、チリウン川はすぐに増水し、川の湾曲にはまり込む村落を直撃する。雨期には洪水は週2、3回はくだらず、4、5メートル級もこの雨期で5回あった。2月末の洪水は1週間引かなかった。村落には損壊や泥まみれの家屋が散見され、壁には水かさの跡がついた。傷跡はまざまざと残っている。
 ある50代男性は州に施策を働きかけた。07年州知事選でファウジ・ボウォ前知事の選挙対策支部に入り当選を支援した。だが「ファウジさんは在職中、この地域の問題に取り組まなかった」。男性は昨年の知事選ではファウジ陣営に入らず、選挙期間中にはジョコウィ現知事が村落を訪れた。村落の入り口にある写真を印刷したタイルにはジョコウィ知事訪問の写真もある。
 ジョコウィ知事は、就任直後の昨年11月からチリウン川治水に伴う移転を提案してきた。州と住民はこれまで4回会合を開き、ジョコウィ知事も2回同席した。住民は期待と困惑の入り交じった心境になっている。(つづく)(吉田拓史、写真も)
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 紙面で紹介できなかった「洪水村の移転」の写真を、じゃかるた新聞のウェブサイト、フェイスブックアカウントで公開しています。

◇関連写真
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チリウン川で水浴びをする子どもと千ルピアで対岸をつなぐ渡し船。川原にはごみが積もっている
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