アナス党首が辞任 汚職事件の容疑者断定で 民主党の内情暴露も示唆


 ハンバラン競技場建設に絡む汚職容疑で、汚職撲滅委員会(KPK)が容疑者に断定した民主党のアナス・ウルバニングルム党首は23日、中央ジャカルタの民主党中央執行委員会事務所で記者会見を開き、党首を辞任すると表明した。アナス党首は自身の無実を主張した上で、自身が容疑者に断定されたのは政治的な要因によるものと強調。汚職疑惑が突き付けられた幹部を切り離そうとする党内勢力に対し、徹底抗戦の構えを示した。今後、党の内情を暴露することも示唆。2014年の選挙をにらんだ政争の激化は、ユドヨノ大統領の支持母体で与党第一党の民主党のさらなる迷走を招く可能性がある。

 アナス党首は「容疑者としての法的な地位が確定した以上、その地位は法律以外の要素によるものだと確信しているが、私の個人的な倫理基準に照らし合わせ、党首を辞任する」と表明。また、自身を党首に選出した2010年の全国党大会までさかのぼり、「私は望まれていない赤ん坊だった」と述べ、アナス氏ではなく、アンディ・マラランゲン元国務相を支持したとされるユドヨノ大統領が今回の問題の背後にいることを示唆した。
 アナス党首は「民主党が道義のある政党になるか、残酷な政党になるかが、いま試されている」「これは最初の1ページに過ぎない。これからわれわれがめくるであろうページが、まだ多く残されている」「これから民主党がクリーンで理知的、倫理的なのか、そうでないかが分かる」などとも語り、民主党内部の問題を告発していく構えを見せた。

■党は「アナス切り離し」
 これに対し、ユドヨノ大統領が議長を務める党最高意思決定機関は同日夜、西ジャワ州ボゴール県チケアスの大統領私邸で緊急会合を開き、対応を協議した。
 会合後、7項目から成る声明を発表。「アナス党首が容疑者に断定されたことを憂慮する」としながらも、「最高機関はアナス氏のハンバラン競技場汚職事件の関与について、どのようなことが起こったのかを正確に関知していない」「本当に必要とされる時以外は民主党元党首による一方的な解釈や中傷、攻撃には対応しない」などとして、アナス党首との決別の方針を強調した。
 これに対し、アナス派は「アナス派は全員離党する」「最高機関は独裁者だ」と反発した。
 KPKのバンバン・ウィジョヤント副委員長は23日、「法の執行と関係ない問題を持ち込まないようお願いしたい」とけん制。政治的な圧力とは無関係であることを強調した。ジョハン・ブディ報道官も「KPKは証拠を二つ確保した時点で容疑者を断定する」としている。
 同氏は6カ月の海外渡航禁止を受けたが、拘留されない見込み。民主党は党首の任務について、当面は2人の副党首や幹事長らが引き継ぐとしている。(吉田拓史)

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