「築地のような魚市場に」 観光地化へ衛生面を重視 ムアラバルに年内完成

 北ジャカルタ区ムアラバルのジャカルタ漁港の一角で、新たな中央卸売市場の建設が進んでいる。日本人専門家がアドバイスし、フードコートも備えた衛生管理型の魚市場が年内に完成する見通しだ。観光地化を図りたい政府は「築地に匹敵するモダンな市場に」と意気込んでいる。

 新魚市場「パサール・イカン・モデルン」は、現存の魚市場に隣接する旧海洋水産省研究所の跡地(約2・2ヘクタール)に建設する。2017年12月に着工し、23日時点の進ちょく率は約15%、18年12月の完工を目指す。総事業費約1500億ルピアは国家予算で賄い、国営企業が施工している。
 鮮魚を売るメーンの建物は2階建てで、現市場とほぼ同じ数の900ブースが1階部分に入る。観光客向けに、魚料理が食べられるフードコートを2階に設け、加工品も販売する。敷地内にモスクや駐車場も確保。現市場は移転後に取り壊す計画という。
 ジャカルタ漁港は日本の円借款で開設、現市場は1992年に中央卸売市場として建設された。1日に約400トン、90億ルピアの水産物を取り扱う国内最大の魚市場として活気付いている。

■日本がアドバイス
 市場がにぎわうのは毎日午後6時ごろから。魚を積んだトラックが次々到着し、おけに小分けされて各店舗に並ぶ。魚を載せて場内を行き交うカートは、幅1メートルほどの通路をぎりぎり通れる大きさで、「気を付けて!」という掛け声があちこちで飛ぶ。市場の床で行われる魚の解体作業や、通路のところどころにできる水たまりなど、衛生面も気になるところだ。
 海洋水産省によれば、新市場は通路幅を2メートルほどに広げ動線を十分確保する計画。水はけも良くし、臭いのしない衛生的な市場を目指すという。
 スシ・プジアストゥティ海洋水産相を筆頭にインドネシア側の関係者は「築地のような市場に」と口をそろえる。2017年4月には大臣自ら、東京・築地市場を視察した。
 「日本の市場を参考にしたい」というインドネシア側の要望で、国際協力機構(JICA)を通じて派遣された日本人専門家2人が約1年前から新市場の設計やデザインをアドバイスしてきた。日イの調整役を務める、JICA専門家で水産政策アドバイザーの野村一郎さんは「一番大事なのは衛生面。排水溝をちゃんと作り、魚を洗うためのきれいな水を確保し、日光を遮るものを設ける。市場自体には一般の入場を限定し、上階から見学することなども提案した」と話す。
 現市場で働く人たちは新市場の完成後、移転することになる。普段は各地から買い付けにくる業者で深夜まで活気付く市場。ここで働いて20年になるバスリさん(38)は「観光客がここに来るのは年に1度、イカン・バカール(焼き魚)を食べる習慣がある新年だけ。モールのようにきれいな市場ができれば、観光客もたくさん来てにぎやかになる」と期待する。
 漁港開発に取り組む海洋水産省は18年、西ジャワ州バンドンや南スマトラ州パレンバンでも魚市場を整備する計画だ。スシ氏は8日の起工式で、「人口10万人以上の全都市に、モダンな魚市場を整備していきたい。同様の市場が増えれば、魚の消費も増えるはずだ」と意欲を見せた。(木村綾、写真も)

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